2017年に日本女子オープン連覇を成し遂げた畑岡奈紗は、米女子ツアーの予選会をトップで通過。一方の国内女子ツアーでも勝みなみや新垣比菜といった畑岡と同世代の選手の台頭が目立つ。世代交代が著しく早い女子プロの世界。その要因は、一体!?

若い実力者が突然勝てなくなる理由

男女ともにシード選手の入れ替えは一定数発生します。これ自体はツアーのレベルの底上げになるのでとてもよいことだと思います。男女の顔ぶれを比べたときに、女子ツアーはシードを失う選手の年齢がとても若い事が分かります。優勝経験のある選手でも2年後には予選を通ることが厳しくなりシード圏外に押し出されてしまうこともしばしばあります。

いくつかの要因が考えられますが、ひとつは年齢による身体的な問題があります。男子に比べ女子は身体の発育が早く、スウィングの完成時期も早くなります。一方、体力的なピークも早く、トーニングをしていたとしても早ければ20代中盤には身体の変化が始まります。

この変化が始まった時期に、その時の身体に合わせたスウィング調整が行えるかが重要です。身体の変化はある日突然、対応できないほどのスピードでやってくるものではありません。そのため、ある時点で劇的なスウィング改造をする必要がある事は稀で、自らの身体に合うように、自分のイメージとは異なる動きを少しずつ修正をしていく必要があります。

そういった修正を行うときに大事なのが、自分のスウィングをある程度“型”として体系的に認識できているかという点です。そういったスウィングの核になるものを理解してないと、修正を始めて試行錯誤をしている最中に、変えなくてもよい部分まで変わってしまい、取り返しのつかない事になってしまいます。また、このような傾向はジュニアの頃から練習によって感覚を磨き、天才肌だった選手に多く見られます。

今の女子プロの選手寿命の短さは、年齢に対する身体の変化に対して、スウィングを体系立てて修正できない事が大きく関わっているのではないでしょうか。

そんな中、毎年数多くの新星が登場する女子ゴルフ界において、これまでの選手とは少し違ったタイプの選手がいます。2017年に米LPGAツアーに挑戦し、日本女子オープンで2連覇、LPGAアワードの新人賞を受賞した畑岡奈紗です。

畑岡がゴルフをはじめたのは11歳の頃で、最近のジュニア選手と比べるとかなり遅い年齢だと言えます。しかしその後、中嶋常幸が主宰する「トミーゴルフアカデミー」でメキメキと力をつけ、高校の時にはナショナルチームに選ばれるまでに成長します。

畑岡を指導した中嶋はかつてスランプに陥った時に、コーチの井上透とともに自らのスウィングを再構築し復活を遂げた経験を持っています。畑岡は中嶋に技術だけではなく、スウィング構築に関する哲学も学んだことでしょう。また畑岡が所属したナショナルチームでは、欧米のスウィング理論を体系的に熟知したオーストラリア人コーチ、ガース・ジョーンズが専任で指導にあたっていました。更に現在もナショナルチームのトレーナーがトレーニング指導を行い、科学的なアプローチを多用しながら計画的に技術と体を年々向上させています。

画像: 2017年の「日本女子オープン」の練習場でボールの先に3つボールを並べて打ち出しの方向を確認する畑岡奈紗

2017年の「日本女子オープン」の練習場でボールの先に3つボールを並べて打ち出しの方向を確認する畑岡奈紗

こうした環境の元、スウィングを構築した畑岡はこれまでの感覚派のジュニアとは一線を画しています。今後、年齢を重ねて身体的な変化が生じても、立ち戻るべき基礎が作られているため、恐らく大きなスランプに陥ったり、テクニカルな部分でスウィングが崩れてしまう事は無いでしょう。

これまでの日本のゴルフ界ではジュニアの頃から体系的なスウィング構築によって「造られた選手」というのは少ないように思います。畑岡のように、優れた素質のある選手が欧米のノウハウを用いて体系立ててスウィングを構築していくことで、今後長く活躍できる選手が増えていくでしょう。

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