ショットで凄いのは、「グリーンを狙うアイアンショット」
タイガーの強さは今更説明する必要もないと思うが、代表的な記録を少し書いておく。683週間世界ランキング1位、24歳でキャリアグランドスラム達成、142試合連続予選通過、2016年までに15回の予選落ち(ジョーダン・スピースはその時点ですでに13回)、1997-2008年のメジャーでの通算スコアは126アンダー(次点は63オーバーでその差は189打)など実に驚異的だ。
タイガー・ウッズの強さの源はどこにあったのか? それを改めてデータから分析してみた。見返せば見返すほどタイガーがどれほど凄かったのかを感じる。とにかくどの数値も高く、どの分野においてもほとんど1位という年があるほどタイガー・ウッズは圧倒していて、完全なるトータルプレイヤーと言える。すべてが優れているのは間違いないのだが、その中でも優劣をつけて、タイガーのプレースタイルを紐解いてく。
長年のデータを見て分かることは、タイガーは凄く飛ぶがティショットの精度は低いということ。そして、そこからのグリーンを狙うショットが凄く、アプローチ、パットもうまいがバンカーはそれなり、ということだ。
特にずば抜けているのがフェアウェイからグリーンを狙うショットで、距離で言うと75から200ヤードのレンジにおいてはどの距離を見ても優れており、あえていうなら150ヤード付近がもっとも得意とデータは示している。
つまり、タイガーはティショットで距離を出し、フェアウェイからバーディを量産し、ラフからはきっちりパーセーブ、ミスした時はアプローチ、パットでカバーというスタイルだと言える。強いわけである。
勝負強さは「異常な数値」を示した
勝負強いイメージのあるタイガーだが、データではどうだろう。スタッツを見ると特に特徴が見えなかったので、2016年までの記録ではプレーオフ、3日目でトップに立ち迎えた最終日の成績で見てみてみると、17回のプレーオフで負けたのは実に1回で、45回あるトップで迎えた最終日では43回勝っていて勝率は実に95.6%(ツアー平均は39.7%)だ。
どちらも異常な数値だ。最後の大事なところでの強さが際立っているというよりも、この強さは想像を超えている。平均と比較した時の差がこれまであるとは驚きである。
データ的に安定して圧倒的な強さを見せていた分野がいくつかある。それは、パーオン率、バーディ率、パー5バーディ率だ。ドライバーを使う回数が他のプレイヤーに比べ少なかったにもかかわらず、常にこの部門で上位に入っていたのは驚異的だ。
パーオン率は安定して70%を超えており、約75%を記録している年もありこれもまた群を抜いている。バーディ率も常に上位なのだが、圧巻はパー5でのバーディ率だ。1997年から7年連続1位というデータが残っている。このデータは異次元だ。
現代のゴルフはパー5でいかにバーディをとるかがもっとも重要であるが、タイガーはまさにそれを完全に実現してきたプレーヤーだということが分かる。パー4でもその強さを見せたタイガーだが、パー5でのパフォーマンスは他のどのデータよりも優れており、タイガーの強さの根源はパー5でのパフォーマンスだと、データからは言えるだろう。
それを支えたのは、他を圧倒する飛距離、そして精度の高いアイアンショットだ。イーグル率もさぞ高いのだろうと想像していたが、タイガーの他の数値と比較するとそうでもない。100ヤード付近のショットも強さを見せており、たとえパー5で2オンを狙えなくても3打目からもチャンスを量産していたのが伺える。つまり、タイガーはダスティン・ジョンソンとジョーダン・スピースを足したようなプレイヤーだったのだ。
「無理なく飛ばす」ことができれば十分に戦える
アプローチ、パターのデータが平均程度で振るわない年であっても、出場を絞った少ない試合数にもかかわらず賞金王をとっている。そしてアプローチ、もしくはパターが噛み合った時は更なる強さを発揮している。飛距離が伸びた昨今の米ツアーではアプローチとパットはショットに比べて重要ではなくなっているが、やはり、アプローチ、パターはタイガーにとってもおまけだったと言える。
つまり、2018年の復活の鍵はずばりパー5でのパフォーマンスがどれほどになるのか? ということになる。パー5でのパフォーマンスを高めるために必要なのは、やはりまず飛距離だ。他を圧倒する必要はなく、パー5で比較的楽に戦える飛距離まで持ってくれば良い。
目安はボール初速180mph(約80m/s)。昨年末の「ヒーローワールドチャレンジ」をみると戦える飛距離まで戻っていた。落ちてきたヘッドスピードをテクノロジーと体に負担の少ないスウィングでカバーできているように感じる。
パー5でのパフォーマンスを取り戻し、試合終盤でずば抜けた勝負強さが発揮されることを、タイガーファンとして大いに期待したい。
写真/姉崎正、岩井基剛