以前よりはるかに豊富になった「情報」が若手ゴルファー“覚醒”の裏側にある
ジャスティン・トーマスにジョン・ラーム。突如“覚醒”したかのように強くなり、あれよあれよと世界のトップクラスにまで上り詰める最近の若手ゴルファーたち。佐藤信人は、「SNSなどを通じて、自分の進むべき道しるべが見えるのが大きい」という。
「SNSを活用することで、選手やPGAツアーが身近に感じられること、情報を共有できるようになったことは大きな要因だと思います。情報がないと不安になったり、間違った方向に進むことがありますが、さまざまな情報を手軽に共有できることで、自分が進む方向を間違えにくいのです」(佐藤)
かつては、アマチュアとプロの間には隔絶した壁があり、プロの水に慣れるためにはプロ入りするしか方法がなかった。しかし、最近ではSNSなどでプロたちが試合の裏側からプライベートまでなんでもオープンにする時代。ネット上に無数の情報が飛び交うことで、どうすれば自分がそこに至ることができるのかが明確になり、迷わず最短距離でそこに向かうことができるのだという。
「クラブやボールの進化はもとより、最近ではトラックマンに代表される計測器具の進化によって、スウィングやクラブの軌道に至るまで、細かく分析することが可能になっています。上達の方法が明確になったことにより、上達においても回り道をすることがなくなりました。彼らは大学のゴルフ部ですでにそういった機器を使って練習を積み、メンタルやマネジメントも含めてプロゴルフとかけ離れていない、レベルの高いアマチュア時代を過ごしている。そのことも大きいですね」(佐藤)
つまり、プロとしての成功の道筋、そしてその道にたどり着くために必要な道筋、ふたつの道筋が見えているわけだ。それが、かつてはタイガー・ウッズなど、ごくごく限られた選手しかできなかった“20代前半での大活躍”を生んでいる。
もちろん、ワールドランキング算出方法が“直近の成績”を重視するのも世界ランクを駆け上がる要因のひとつ。しかし、トーマス、ラームといった選手たちは、一時的な勢いだけでない強さを見せている。
最後に気になるのは、ラームの「次」だ。その候補も挙げてもらった。
「次にブレイクしそうな選手は、昨シーズン足の故障から復帰し11月の『シュライナーズホスピタル・フォー・チルドレン・オープン』で優勝した25歳のパトリック・カントレー、そして高校生で出場した2012年の全米オープンで3日目に8位につけるなど優勝争いをし、テキサス大を経て2016年にプロ転向、今シーズンからPGAツアーの出場権を獲得した22歳のボウ・ホスラー。このあたりに注目しています」(佐藤)
アメリカの大学ゴルフ部、そしてPGAツアーの下部組織であるウェブドットコムツアーには、まだまだ“覚醒”しそうな選手がたくさん控えているようだ。日本からも、松山英樹に続く世界のトップで活躍できる若手選手が出てくるのを楽しみにしたい。
写真/姉崎正