「9番アイアンの練習だけを1年続けた結果シングルになった人の話も聞いたことがあります。とくにビギナーにとって、普段の生活で似た動作のないゴルフスウィングを習得するためのブロック練習は非常に重要です」
そう語るのはプロコーチの堀尾研仁。地面に置かれたボールを、道具を使って体の90度左側に飛ばすゴルフは、他に似たものが少ない特異なスポーツ。その動きを体に馴染ませるために、ゴルフを始めたばかりの頃はひとつの番手の反復練習が効果的だ。とはいえ、100を切るレベルになっても、漫然と固め打ちをするのは危険だともいう。
「ブロック練習には、基本を作る、不安定要素を減らすというメリットもある一方で、いわゆる“下手を固める”ことにつながる危険性もあるのです。そうなると、ビギナー時に有効だったブロック練習が、かえってマイナスに作用し、その先の上達を阻害してしまいます」(堀尾)
100を切るレベルになったら、人にはよるがゴルフ場にもそれなりの数だけ足を運んでいるはず。そうなったら、練習場でもコースでのショットを想定したショットを練習すべきだと堀尾コーチは言う。
「コースに出ると、練習場のようにのびのびフルショットできる場面は以外と少なく、距離や方向をコントロールしながらのショットが増えますよね。そういった状況を想定し、1球ごとにターゲットを決め、クラブを変え、打つ距離も変えてランダム練習することで、ボールをターゲットに運ぶためのスウィングを身につけることができるんです」(堀尾)
堀尾コーチによれば、ブロック練習は「形を作る」、ランダム練習は「目標に球を運ぶ」という根本的なテーマの違いがある。つまり、実戦力を高めるのにブロック練習は有効ではなく、ひとつの動きの型を習得したり、動きを矯正するのにランダム練習はふさわしくないということにもなる。
ところで100を切ったゴルファーがやりがちなのが、さらなるレベルアップを目指してのアプローチのブロック練習。「今日はアプローチを重点的に練習するぞ!」と心に決めて、練習の半分をサンドウェッジで30ヤードを打つのに費やした、なんていう意識の高いゴルファーは少なくないはずだが、堀尾コーチは「これも、できればランダム練習にしてもらいたい」という。アプローチこそ、様々な番手、様々な高さをコントロールすることで、引き出しを増やすことができるからだ。
では、100を切ったらもうブロック練習は必要ないのかといえば、そう単純な話でもない。
「たとえば、スマホで動画を撮ったりして、自分のスウィングを客観的に見て、修正すべき箇所が見つかったとします。それを修正するために、意識して行うブロック練習には価値がありますし効果も期待できます。ランダム練習とブロック練習、どちらだけでいいということはないので、今の自分の状態を見極めて、必要な練習を行うのが大切ですよ」(堀尾)
春までに、スウィングの課題をブロック練習で克服するか、ベストシーズンのゴルフ場を想定し、ラウンドシミュレーションを兼ねたラウンド練習で実戦力を高めるか……是非、今の自分のゴルフと相談して、練習メニューを決めてもらいたい。
写真/加藤晶