競争相手のスピースに対して強烈な“ネガティブキャンペーン”を展開!?
彼の名はビリー・ハーレーⅢ。大会初日の午前スタートで一時トップに並んだが終盤崩れて21位タイ。2日目はバーディを1つも獲れず76を叩いて定位置=予選落ちを喫した。
なぜ彼に注目したかというと大会直前に行われた選手会長選挙に立候補し、お笑い芸人顔負けのプロモーションビデオを製作していたからだ。
日本と違いPGAツアーの会長は4人。任期は3年で毎年4名のうち1名が改選され、今年はデービス・ラブⅢの任期満了に伴って選挙が行われた。
メジャー3勝のジョーダン・スピースがすんなり就任するかと思われたが、そこに颯爽(?)と名乗りを挙げたのがハーレーだ。
会長選の選挙キャンペーンビデオは本命のスピースをディスりまくる過激な内容。禍々しいナレーションが、禍々しい字幕とともに、いかにスピースが会長に相応しくないか、ハーレーがいかに適任かをアピールしている。
スピースのキャディに対する横柄な態度や(実は横柄ではない)、インタビューで答えた「僕は他人の言葉にあまり耳を貸さないタイプ」という文言を切り取って断罪。果ては全英オープンに勝利しイギリスからクラレットジャグ(優勝杯)を盗んだ泥棒呼ばわりをする始末。
もちろんこれハーレー流のジョーク。大統領選で行われる相手を堕とし自分を上げるネガティブキャンペーンの方式だ。
いい人代表のスピースを「世界を動かす1パーセントの鼻持ちならないエリート」とこき下ろし、プロ入り前海軍士官経験ある自らを“ゴールデンボーイ”と呼び庶民の代表である我こそ人の気持ちがわかる。会長職に適任と力説する。
ときにはキャディに「今日は僕が担ごう」とキャディバッグを担ぐパフォーマンス。すかさずキャディのインタビュー画像がインサートされ「うちのボスはすげぇ、いい人なんです。とっても愉快で一緒に仕事をしていて楽しいッス」といわせている。
ビデオを撮り終えたところでバッグを放り投げ、実はそれが単なるパフォーマンスだったと種明かしするオチも。
「ビリー・ハーレーⅢは正真正銘のアメリカンヒーローです!」というナレーションに合わせ白い歯を輝かせ間抜けなポーズをとる男。随所に笑いの地雷をちりばめた抱腹絶倒のビデオは一見の価値あり。
会長選? もちろんあっさり落選している。新会長の一員となったスピースはハーレーのビデオを見て「僕の一票は君のものだよ」と大人の対応をしているのがまたシャレている。
以前ベン・クレインの摩訶不思議なエクササイズビデオが話題になったがハーレーの笑いのセンスもなかなかのもの。PGAツアーには逸材が多い。
ちなみに2年前のクイックンローンズで奇跡的にツアー1勝を挙げて得たシードが今年切れる。現在のフェデックスカップランキングは182位で来年以降、彼の勇姿をツアーで見られるかどうかは微妙な状況だ。その前にハーレーの顔と名前を覚えて欲しい。