バッバ・ワトソン復活V、その脅威の飛距離
タイガー・ウッズの参戦で盛り上がった2018年のジェネシスオープン。その脅威の飛距離で復活Vを果たし、生涯勝利数を10にしたのはバッバ・ワトソンだった。中でも圧巻だったのは最終日の17番、590ヤードのパー5でのティショットの飛距離だ。
右足(右打ちにとっての左足)をフィニッシュで大きくずらすほど力強く振り抜いて放った飛距離は実に348ヤード、残りを6番アイアンで楽々2オンしてバーディを決め、優勝をほぼ確実なものにした。その信じられない飛距離は一体どのように生まれているのか?
実は、バッバ・ワトソン、ロリー・マキロイ、ダスティン・ジョンソンといった飛ばし屋たちは、ヘッドをより走らせる“あるテクニック”を使っている。
飛距離を出すポイントとされるもののひとつにダウンスウィングのタメがあるが、事実このタメがあるほうが効率よくヘッドスピードは上がる。その理屈は、グリップの位置に対してヘッドが遅れれば遅れるほどヘッドは加速させられるからである。弓を引けば引くほど勢いが増す原理に似ている。
スウィングにはこのタメに相当するもうひとつのポイントが存在する。それはフォロースルーでの「たたみ」だ。グリップの動きに対してクラブヘッドの動きを速くする行為はダウンスイングでいうタメの行為にあたり、フォロースルーにかけてヘッドがいかに走っているかの指標として考えることができる。
たとえば一切タメもたたみも使わないスイングだと、グリップの動く距離とヘッドの動く距離は常に一緒になり、ヘッドスピードはグリップスピードと同じになってしまう。これではヘッドスピードは速くならない。つまりこの逆の原理をいかに使うかがヘッドスピードを上げることにつながるのだ。
つまり、グリップが移動する距離に対していかにヘッドを走らせられるか(多く移動させられるか)がヘッドスピードを上げるためのポイントになる。ヘッドスピードを上げるためには、できるだけタメを長く保ち、そしてインパクトにかけて一気に開放し、そしてできるだけ速くヘッドをたたんでいくことが重要だ。
私はこのグリップの移動距離に対するヘッドの移動距離を分かりやすいように数値化した。ダウンスイングでシャフトと左腕が作る角度が最初に90度以上になる位置と、フォローでシャフトと右腕が作る角度が最初に90度以下になる位置から算出した独自の数値で、グリップが動く距離に対してクラブヘッドが動く距離を表している。少ないグリップの移動距離に対してヘッドがより多く動いている方が効率が良いことになる。
多くのサンプルを集めて分析してみたところ、面白いことがわかった。タメとたたみという観点から見ると、大きく分けて4つのタイプのスウィングが存在することがわかったのだ。すなわちタメとたたみがほとんどないAタイプ、タメが強いがたたみが弱いBタイプ、タメは弱いががたたみが強いCタイプ、タメもたたみも両方強いDタイプである。
アマチュアのほとんどがタメもたたみもないAタイプだ。プロはどちらかを使っているB、Cタイプが多い。Dタイプが理想的なわけなのだが非常に少ない。このタイプのスウィングは、効率よく飛距離を出すことができるのだが、実際に行うのは非常に難しいのがその理由だろう。
バッバ・ワトソンはDタイプで、他にはマキロイ、ダスティン・ジョンソンも同じタイプ。個人的にかなり注目している2017年ボール初速1位のブランドン・ハギーもDタイプだ。その中でも、バッバの数値は161(少ないほど良い)で、マキロイとジョンソンは198、ブランドン・ハギーは184だ。
タイガーはBタイプでタメの強いタイプだが、この数値は303と彼らに比べ高い。我らが松山英樹は290だ。それを見ると、ワトソン、マキロイ、ジョンソン、ハギーの4名がいかに効率よくヘッドを走らせているかが分かる。ちなみに161という数値は私が調べた限りもっとも低く、バッバはアメリカツアーの中でもっともヘッドを効率よく走らせているプレイヤーと言える。バッバの数値であまり目立たないが他の3人の数値も非常に優秀で、彼らの飛距離の1つの秘密だと言えるだろう。
問題は、Dタイプのスウィングは非常に難しいという点だ。なので、ほとんどのアマチュアがAタイプであることを考えるとCタイプを目指すのが妥当だ。Dタイプを目指すのは正直ほぼ無理と言える。そしてタイガーと同じBタイプも実は非常に難しい。ダウンスウィングでタメを作るのは、入射角が急になりやすく、まともに当たるのも難しくなるからだ。
アマチュアにとって最も現実的なのはCタイプになることで、インパクトからフォローにかけてヘッドをたたむスピードを上げることだ。これはタメを作るよりは楽で、たたむ意識することによる悪影響も、タメの意識よりは少ないだろう。
では、どのような意識が良いのかといえば、それはバックスウィングでコックをする意識と似ている。フォローに向けてコックするような意識でたたんでいくことだ。これによりヘッドはより速く回っていきヘッドスピードアップにつながる。飛距離アップの方法はいろいろあるが、この方法は比較的簡単なので、試してみる価値はあるだろう。
写真/姉崎正