「フックが出たら一人前」は間違い!?
昔は、「はじめはみんなスライサー、フックが出たら一人前」みたいなことをよく言いました。インパクトでフェースが開いて当たるスライサーから、閉じて当たるフッカーへ。それは、フェース面をある程度コントロールできるようになった証であるというわけです。その是非はともかく、今やすっかり「フックが出たら一人前」ではなくなっています。
なぜかといえば、それは端的に昔に比べてクラブが大きく変わっているからです。今のクラブは昔に比べて劇的にボールが“つかまる”ようになっています。そして、その最大の理由はクラブの「ライ角」にあります。
ライ角とはシャフトと地面が作る角度のことで、数値が大きいほどアップライトと言われ、つかまりが良くなります。ゴルフクラブはトウ(クラブ先端側)が高いほどフェースが左を向きやすくなるため、インパクトでフェースが開くことが少なくなるためです。
具体的な数値を見てみると、アマチュア向けクラブの代名詞的存在であるダンロップのゼクシオ、その2000年に発売された初代モデルのライ角は56度でした。それに対し、最新モデルでつかまりの良さに定評があるブリヂストンのツアーB JGRはなんとライ角61度。5度もアップライトになっているのです。
このトレンドは、プロ使用モデルにも共通するのかといえば答えはノーで。同じブリヂストンを例に挙げれば、プロモデルであるツアーB XD-3のライ角は58度と、JGRとは3度異なります。なぜかといえば、右に飛ぶのが嫌なアマチュアと左に飛ぶのが嫌なプロ、その好みの違いがまず第一に挙げられると思います。
前述したように、日本ではスライスからフックになると上達したとされてきた歴史があります。そのため、クラブには左に飛ぶ機能が求められてきました。超アップライトな最近のクラブは、その要求を高度に満たしたものだと言えます。
それに対して、プロはボールが自分の思ったよりも左に飛んでしまうと商売になりません。なぜなら、左へのミスは“飛んでしまう”からで、プロの場合思ったよりも飛んでしまうとスコアメークができない、つまりお金が稼げないんです。それに対し、アマチュアの場合はたとえミスだとしても、思ったより飛ぶと嬉しいという人は正直少なくないはず(笑)。
そんなわけで、最近では「フックに悩んでいる」とちょっと嬉しそうに相談に来られるアマチュアの方が散見されます。スライスからフックにミスが変化した、その理由は説明したようにクラブの影響も考えられますから、調整機能のあるクラブであれば、ヘッドのウェートを変えてみたり、フェースの向きを変えてみたりするのは有効な方法です。ショップや工房に相談して、シャフトを少し短くするとか、調整を施すのも手です。
アップライトでつかまるクラブ、上手く使いこなしてくださいね。
写真/増田保雄、三木崇徳