アイアンの進化は「ソール」にあり!?
同じ地面にあるボールを直接打つクラブなのに、ウェッジでは大注目されるがアイアンではまったくといっていいほど注目されないのが、ソールかもしれない。アイアンというとバックフェース形状につい目を奪われてしまう人も多いだろう。しかし、実際はウェッジ同様、アイアンの“肝”もソールにある。今日は以前に行ったアイアンのソール別インパクト実験を紹介してみよう。これをみれば、アイアンの進化はソールにあり! と理解していただけるはずだ。
いちばん左の先が削れてしまったディボット跡は、1953年製のベン・ホーガン「プレシジョン」で打った時のもの。1980年代前半までは、アイアンのソールは幅が狭く(14ミリ)、ソールの角度(バウンス)も少ない“スクープソール”といわれるソール形状が主流だった。ソールが地面に接地するとそのまま地中深く進んでいったことが、ターフ跡断面をみてもよくわかる。
次に真ん中の「iアイアン」。こちらのソール幅は21ミリあり、これが今ではほぼ一般的なアイアンのソール幅となっている。削り跡の幅は広く、先にいくに連れて浅くなる、船底のディボット跡が特徴。ある程度、深く入るがフェースが上向きになり地中に出てくるのも早い、いわゆる抜けのいいソールであることがわかる。
最後にいちばん右の「G MAX」アイアン。こちらは超ワイドというべき幅広ソール(27.5ミリ)で、物理的に地中に潜りにくい形状。このため、削り跡も薄く、ベント芝の表面を軽くさらうようにソールが滑っていったことがわかる。
ソール幅が違う3モデルを打ち比べた結果、ターフの深さに違いが現れた。狭いソールはターフの深い地点まで到達し、幅の広いソールはターフの表面を滑るように進んだことが分かった。
アイアンはソールから作っていく、といった往年の鉄人
この実験からもわかるように、ソールの幅はインパクトからフォローにおけるヘッドの“抜け”にものすごく大きな影響を与えている。アイアンのソールに対する重要性を、鉄人といわれた1940年代〜50年代の名選手、ベン・ホーガンはアイアン担当になった新人エンジニアにこう説いている。
「それがいいアイアンかどうか、その真実は土の中にある。インパクト直後からヘッドがどう地中に潜り、進み、抜けていくか、そこに答えがあるのだ。その鍵を握るのが、ソールのあり方だ。地中での動きをイメージし、ソールを決める。そうすれば、その上のフェースの大きさなども自然に決まるものだ」(ベン・ホーガン)
我々はついバックフェースデザインに目を奪われてしまうが、大事にしたいのは、ソールのリアクションであり、ヘッドの“抜け”である。1953年製のホーガンアイアンは、私が打つと刺さってしまったが、きっとホーガン本人が打てば適正なリアクションでスムーズなヘッドの抜けをしたのだろう。
当然のことながら打ち手の力量に大きな差があり、また、グラウンドコンディションも時代や環境によって大きく異なり、それによって適正なソールのあり方は異なるのだ。
アイアンは、クラブの中でも実に多くのモデルが販売されている選びにくいアイテムだが、自分に合ったアイアンを選びたいならば、まずソールの幅(狭・中・幅広)で大別してみることをオススメする。ソール幅が広いほど、ウェッジのハイ・バウンス(ソールの角度)のように多少ダフってもミスになりにくいモデルであるといえる。