長らくアマチュアからプロまで指導してきた増田哲仁プロは、「頭を動かしてスウィングすることが、頭が動かないスウィングを手に入れるコツ」と話す。一体どういうことか、著書「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る。」からご紹介しよう。

頭を大きく動かしてスウィングしよう

――バランスよくスウィングするためには、スウィング中、真ん中にある頭は動かしてはいけないのですか。

増田:まったく逆です。頭を大きく動かさなければ、バランスのとれたスウィングは身につかないと私は考えています。たとえば、頭を押さえつけられた状態ではイスから立ち上がれません。頭が前方に動いてリードしていかないと、イスからは立てないのです。地面にあるモノを拾うときも同じ。必ず頭から動き出しています。

――頭が大きく動くことで、バランスをとるのはスウィングも同じ、ということ?

増田:その通りです。基本的に、どんな運動でも頭が先に動くことで、体や足が動き、体全体がバランスよく動くのです。頭を動かすと体の中心、真ん中がズレますから、一旦、バランスは崩れるんです。そして一度崩れたバランスを元に戻そうとすることで、体全体が動く。「復元する力」が働くわけです。

これは人が歩くときを例に説明すると、わかりやすいと思います。人は歩くときに足ではなく、頭を前に出すことで始動しています。頭を前に出すということは、重心が前に出て、体のバランスが崩れるということです。わかりやすくいえば、前のめりになって転びそうになるわけです。その転びそうになった体勢を復元するために左右どちらかの足が前に出てバランスをとる。この繰り返しが、歩くという動作のメカニズムです。

――頭が動くことで体が動くというのが、人間にとって自然な動きなのですね。

増田:私がゴルフのスウィングをつくるときに、最初は頭を大きく動かしてもらうのは、誰もが持っている「体の復元力」、つまりバランスをとって、元に戻ろうとする体の動きを引き出そうとしているのです。

画像: ボールを拾ったり、ティペッグにセットする。ティペッグを地面に刺したり拾う......。人間はつねに頭から始動している

ボールを拾ったり、ティペッグにセットする。ティペッグを地面に刺したり拾う......。人間はつねに頭から始動している

――しかし、プロや上級者のスウィングを見ると、頭はあまり動いていないですよ。

増田:もちろん頭を大きく動かすスウィングは、途中経過であって、最終形ではありません。それに、頭が動かないスウィングといっても、あれは意図的に頭を止めようとしているものではないんです。

たとえば、コマというのは速く回れば回るほど、軸がしっかりして動かないように見えますよね。あれと同じように、ゴルフのスウィングも、いい動きができて回転のスピードが速くなると、頭は止まっているように見えるものなのです。頭を止めようと意識すれば、体の動きが悪くなって、スムーズに回転できなくなります。ですから、頭の動かないスウィングをしたいのであれば、かえって頭は動いてもかまわない、と思わなくてはいけないんです。

――頭を大きく動かすと、ボールにまるで当たらない気がしますが......。

増田:当たらなくたっていいんですよ。あくまで、頭を動かすのは正しいスウィング、体の動かし方を知るための手段なんです。最初は頭を大きく動かしますが、体の動きがスムーズになってくれば、回転スピードが上がりますから、頭は止まっているように見えてきますし、ボールにもちゃんと当たるようになります。

画像: バックスウィングとフォロー時の頭の位置を比べると、大きく動いていることがわかる

バックスウィングとフォロー時の頭の位置を比べると、大きく動いていることがわかる

――増田プロを信用しましょう(笑)。では実際、どれくらい頭を動かして、スウィングを知るのですか。

増田:最初は「えっ!」と思うくらい、頭を動かすといいでしょう。そうですね、左右で1メートルぐらいの幅でしょうか。私は300ヤード打つなら300ヤード分、10ヤードなら10ヤード分、頭を動かすことが必要だと考えていますが、まずは最大限、400ヤード分でも500ヤード分でも、大きく頭を動かすことが大切なのです。

「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る。」(ゴルフダイジェスト新書)より

写真/増田保雄、松岡誠一郎

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