アーノルド・パーマー招待でロリー・マキロイと優勝争いを繰り広げ、惜しくも敗れたタイガー・ウッズ。そのパフォーマンスは全盛期並みに戻ってきている一方、マキロイと比べた場合にヘッドスピードに対して飛距離の効率が“悪い”とデータ分析の専門家、ゴウ・タナカは指摘する。それは一体なぜ起こっているのか? 理由はタイガーのフォロースルーに隠されている!?

マキロイの最終日の平均飛距離は驚愕の「335ヤード」

先週のPGA(米男子)ツアー、アーノルド・パーマー招待では、タイガー世代VS新世代の代表マキロイ、という構図になったわけだが、マキロイの驚異の追い上げに軍配が上がり、新世代が勝利するという結果になった。

マキロイは平均飛距離、パッティング、アプローチの各部門で1位の成績を残す圧倒的勝利だった。4日間の平均飛距離は316.7ヤード、最長ドライビングディスタンスは373(2位)だった。なんと、ギアを1つ上げ、勝負をかけた最終日の平均飛距離は335ヤードだ。

タイガーは4日間平均飛距離が306.7ヤードで、最長ドライビングディスタンスが348ヤードだった。パット、アプローチは8位、11位といずれも悪くはないが新世代マキロイのパフォーマンスに圧倒されるという結果となった。

ただ、今後に向けてはタイガーにとって非常に良い傾向、結果が出始めていることは間違いない。タイガーはトーナメントを勝つにあたって非常に大切な16個あるパー5で12回もバーディを取っているのだ。最後のパー5でOBを叩いてしまったのが非常に悔やまれるが、これは復調を確実なものにしてきたことを非常に強く表している数値だ。今後への期待は高まる一方である。

画像: 試合を重ねるごとに強さを取り戻しているように見えるタイガー(写真は2018年のザ・ホンダクラシック)

試合を重ねるごとに強さを取り戻しているように見えるタイガー(写真は2018年のザ・ホンダクラシック)

ただ、一つ気になることはマキロイとの飛距離の差だ。飛距離において、マキロイがタイガーを圧倒している。タイガーは先々週の試合において今年のPGA最速のヘッドスピードを記録するなど、ヘッドスピードは速い。今回の試合を見てもしっかりと振れている、むしろ振れすぎているぐらいのイメージで、ヘッドスピードに対しての飛距離効率は悪いように思える。

実際今季の平均ヘッドスピードランキングはマキロイが2位、タイガーが3位でその差は0.44mphで、日本で馴染みのある単位だと0.2m/sと非常に少ない。更に、今季の最速で比較するとタイガーがマキロイを3.6mph(1.6m/s)大きく上回っている。

それにもかかわらずこの飛距離の差が出るというのは効率の良し悪しだろう。そこで気になるポイントがタイガーのフォロースルーに見られる変化だ。

ドローのようなフォローでフェードを打っている!?

タイガーはフォローを変えることでフェード、ドローの打ち分けをするプレイヤーだが、最近のタイガーはドローを打っているようなフォローの抜き方でフェードを打っているのだ。スイングと球筋にブレがあるということだ。これは再現性の観点から見ると安定に欠く。

画像: フォローの抜き方に変化が見えるとゴウ・タナカは指摘する(写真は2018年のザ・ホンダクラシック)

フォローの抜き方に変化が見えるとゴウ・タナカは指摘する(写真は2018年のザ・ホンダクラシック)

タイガーの距離は十分のところまで戻ってきているので、フェードをドライバーショットのベースにすることでより良いコントロールを求めているのかもしれないが、実際やっていることは逆のように思えてしまう。

最終日16番パー5で放った致命的なOBもフェードを狙ったショットだったがつかまりすぎてしまい、左にミスをした結果だ。手首を強く返していくフェードにはこのリスクが永遠についてまわる。

果たしてこのフェードを強くしたタイガーのティショットは今後どうなるのか。パー5でのパフォーマンスも全盛期を彷彿させるところまで戻し、マスターズに向け視界良好に見えるタイガーだが、スピン量が多く、曲がり幅も多く見えるティショットが唯一の不安要素だろう。

飛距離を出すという観点からみてかなり理想的なスイングをするマキロイに対し、タイガーがあれだけ飛距離で差をつけられているのも、フォロースルーの変化が原因していると思われる。

ただ、スタッツ的にみてドライバーの精度はランキングとの相関は弱く、タイガーの他の部分のスタッツはかなり良くなっているので、今後の活躍が間違いないところまで来ているのはたしかである。

マスターズがいよいよそこまで来ている。強いマキロイ、復活したタイガーとミケルソン、怪我から復帰の松山など、とにかく近年、いや歴史上でもっとも盛り上がるマスターズになるのではないだろうか。

写真/姉崎正

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