昔から病いは気から、といわれるが、ゴルフクラブの良し悪しもメンタル次第、気の持ち様だと感じることはないだろうか? たとえば、「このクラブ、すごく飛びますよ」といって渡されると、なんとなく快打連発で“欲しい!”となるし、「結構、難しいですよ」なんていわれたら、一発も芯をくわないこともある。
スペック、数字にもメンタルに響き、結果を左右してしまう“魔力”がある。私の手元に、チーピン多発をなんとかしたいと試行錯誤、いじりまくってたどり着いた1本のカスタムドライバーがある。これを1年ほど様々なゴルファーに何も説明せずに打ってもらっているのだが、その反応を少しだけ紹介しておきたい。
ゴルファー心理というのは面白いもので、結果がよくても、悪くても、打った後に「これ何グラム?」、「バランスいくつ?」、「硬さは?」、「ロフトは?」、「長さは?」と畳み掛けるように、スペックに対する質問を飛ばしてくる。素性がわからないとなんだか気持ち悪い。それが悲しい“性”なのだ。
では、このカスタムドライバーのスペックを下記に書き出してみるので、どう感じるのかご自身で確認していただきたい(ある意味、テストのようなもの?)。
このドライバーは、
長さ/43インチ
総重量/416g
バランス/A6.5
振動数/351cpm
ロフト/9.5°
です。
どうだろうか? この並んだ数字から、何かを感じたはずである。クラブのことをよく知っている人ほど、常識ハズレで怪しい数値に感じたと思う。
知ると打てなくなる、ゴルフクラブの数字
実際は、こんな数値のドライバーでもいい球を連発し、“俺も欲しい!”となるケースが意外に多かったりする。しかし、スペックに対する質問にこちらが回答した途端に、いい球が出なくなってしまう(いい球を打たなくなってしまう)ゴルファーが多いのも事実だ。知らなければよかったネ、そう心の中でつぶやきつつカスタムドライバーを引っ込める、その連続だった1年である。
ゴルフクラブの数字。気になるロフト角、シャフトの硬さ、キックポイント、振動数、長さ、大きさ、重心距離……。クラブ選びの指標となりそうな数字はたくさんある。しかし、ほとんどの数字は計測方法が統一されていないために、メーカー公表値を横並びで比較しても、意味あることとは言い難い。
同じロフト表記でも、メーカーが違えば、モデルが違えば、シャフトが違えば、長さが違えば、打ち出し角度は変わってしまうし、シャフトの硬さも同じ硬さSでも、モデルによってまったく違う硬度であることは、多くのゴルファーが知っているはずである。
クラブ選びの拠り所にすべきなのは、打球結果なのか、スペックなのかどっちだろう? 狙った場所に安定して飛んでくれるならば、スペックはどうあれ、いちばんの道具なのではないだろうか。
今日(2018年3月23日)から3日間、日本最大のゴルフ用品の見本市「ジャパンゴルフフェア」が、パシフィコ横浜で開催される。試打ブースも年々充実、様々なニュークラブを打って性能を確かめることが可能だ。この機会にぜひ、同じロフト、シャフト硬度のものをあえて打ち比べていただきたい。表示スペックが似通っていたとしても、打球結果や振りやすさはまったく違うはずだから。
写真/増田保雄