各メーカーも力を入れている飛距離に特化したアイアン。人によっては最高の救世主だが、「アイアンに飛距離はいらない」という人もいる。「飛ばす」ことに特化したアイアンのメリットデメリットはなにか。業界屈指のギアオタクが読み解いた。

激飛び系アイアンはいまやひとつのジャンルとして確立されている!

皆さんこんにちは。ギアオタクショップ店長・クラブフィッターの小倉です。最近お客様のクラブを見ているととても多いのです。いわゆる「激飛び系アイアン」が。ヤマハのインプレス UD+2をはじめ、ブリヂストンスポーツのTOUR B JGR HF1、マルマンのシャトルNX-1、キャロウェイのエピックスター、ローグスターアイアン、プロギアのエッグなど、飛距離に特化したアイアンがわんさかおります。

もはやひとつのジャンルとして確立したと言っても過言ではないでしょう。わたくしも以前このジャンルのクラブをまとめて試打させて頂きました。普段7番アイアンで155ヤードを打っているのですが、これらのクラブを使うと、簡単に170ヤード以上飛びます。面白がってマン振り(力いっぱい振ること)してみたら190ヤード以上飛んだボールもありました。

そりゃあ飛ばないより飛んだほうが楽しいですよ! ですが、アイアンはドライバーやフェアウェイウッドと違い、より正確に目標を狙うクラブ。アイアンで飛距離に特化すれば当然デメリットも出てきます。そもそもなぜそんなに飛ぶのかも気になりますよね? 今回は「激飛び系アイアン」の飛びの秘密とメリット・デメリットをお話しましょう。

立ったロフトと低く深い重心、長いシャフトで上げて飛ばす

最初に飛距離の出る理由に迫っていきましょう。飛距離の出る秘密のひとつにヘッド構造があります。飛距離の出るアイアンの共通点にロフトが立っているという部分があるのですが、ただ単にロフトを立てるとスピン量が減り、ボール初速が上がりやすくなる半面、ボールが上がらなくなります。その上がりにくさをフォローするために重心を低く深くしているのです。

画像: このソールの厚みは重心を深くするため

このソールの厚みは重心を深くするため

重心が低く深ければ、ロフトが立っていてもインパクトの瞬間でヘッドが上を向きやすくなるのでボールが上がりやすくなります。さらにスイートエリアも広くなるので、芯を外しても飛距離ロスが減り、安定して飛ばせるようになるのです。

飛距離系アイアンのヘッドを見ると、通常のアイアンと比べ、ソールが厚かったり、ユーティリティのように奥行きのあるデザインになっていたりするのは重心を低く深くするためなんですよ。

もうひとつのぶっ飛ぶ理由は、長さです。通所のアイアンに比べて大体0.5~1.0インチぐらい長くなっています。これは番手でいうと1番手から2番手分ぐらい。クラブが長くなれば、同じ力加減で振っても遠心力が高まるのでヘッドスピードは高まります。ロフトを立てつつ、ハイテクな低深重心のヘッドでボール初速と高さを確保しつつ、クラブの長さでさらにヘッドスピードを高める。これが飛距離系アイアンの飛びの秘訣です。

「番手の数字が違うだけ」は本当か?

ここまで読んで気付いた方もいるのではないでしょうか? いくら芯が広くて上がりやすいハイテクヘッドを使っているからと言っても、ロフトを立てて長くしたアイアン……それはつまり「上の番手のアイアン」なのです!

現にごくスタンダートのアイアンの5番と飛距離系アイアンの7番を比べると長さとロフトはほぼ同じになります。このふたつを打ち比べると飛距離系アイアンの方がヘッドの構造が違うため、弾道も高く飛距離も出ます。確かに飛ばしやすいのですが、ここに飛距離系アイアンのデメリットが隠れています。

スタンダードなアイアンはロフトなりの高さに加え、ある程度のスピンが掛かっているため、グリーン上で止まりやすい球筋になります。しかし飛距離系のアイアンは、高弾道で打出すものの、スピンを減らして飛距離につなげているため、グリーンに直接着弾しても止まりづらいのです。

また飛ぶアイアンには短い距離のクラブをどうするかという問題も出てきます。

7番で160~170ヤード飛んだとしましょう。そうすると単純計算で、8番で150~160ヤード、9番で140~150ヤード、PWで130~140ヤードとなり、いわゆるウェッジのゾーンでカバーしなければならない飛距離が大幅に増えます。まぁこれに関してはちゃんと販売しているメーカーも理解していて、PW1、PW2とか、AW、GWとか、AW、ASなどの名前でウェッジの本数を増やして番手間の距離差を埋める努力をしています。

画像: 4月13日発売予定のローグスターアイアン(7番のロフトが27度)の場合、41度のPWの下に、46度のGW、51度のAW、56度のSWがある

4月13日発売予定のローグスターアイアン(7番のロフトが27度)の場合、41度のPWの下に、46度のGW、51度のAW、56度のSWがある

しかし通常の単品ウェッジを組み合わせるとなると実際にこれらの番手を打ってどのくらい飛ぶのか? を確認してからにしないと番手間の飛距離差がいびつになりますのでご注意を。

アイアンでも飛ぶということは、長い距離を短い番手で打てるのでプレッシャーが減るという側面もあり、飛距離が出ないゴルファーにはとても有効なことです。しかしいたずらに飛距離だけを求めると、当然犠牲になる部分が出てきます。しかしその悪く作用する部分を知っておけば、対処も可能なわけで「飛ぶけどスコアが作れない」なんてことにならなくて済みます。例えばスピン系ボールを使って少しでもスピンを確保するとか。

自分の使っているクラブの特性を知っておいて損はありませんよ。ぜひ参考にしてみてくださいね!

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