プロから「不安要素」を取り除くのがプロキャディの仕事
研修生時代にはゴルフ場でキャディ業務もしていた佐藤大輔さん。今でもオフシーズンにはコースで一般アマチュアのキャディをすることもあるとのことだが、プロのキャディとアマチュアのキャディ。仕事をする上で何が違うのか質問してみた。
「昔のことを思い返すと、キャディ業務だけでなく自身のプレーに関してもそうですが、雑だったなと思います。当たり前ですがプロが求めるものは、やっていることの精度が高いですよね。たとえばアップダウンに関して、研修生の頃にキャディをやっていたときは、『これどれくらい打ち上げをみるの?』と聞かれたら、大体5ヤードくらいですかねと言っていたのが、プロの場合は2ヤードだったり、3ヤードだったり、より細かい数値が必要になります」(佐藤)
そういった打ち上げや打ち下ろしの数値は練習ラウンドの時に、計測器を使用して入念にチェックしておく。
「距離にしてもグリーンの傾斜にしても、どっちに外したほうがいいのかなど、できるだけアンラッキーが起こらないように準備をしておく必要があるんです。できるだけプロから不安要素を取り除くために準備が重要で、やっぱりなんだかんだ言ってコースチェック命なんです」(佐藤)
選手ももちろん自身でコースチェックはするが、本番になればなかなかそこまで気が回らないのも事実。そこで重要になるのがキャディのサポートなわけだ。
佐藤さんには、この下調べに関して、ちょっと苦い思い出があるという。それは、グリーン上でラインを聞かれたことがほとんどなかったという、茂木宏美から初めてラインを聞かれたときの話だ。
「茂木プロからパッティングのラインに関しては聞かれるのは1年に1回あるかないかなんです。多分、トータルでも2回か3回くらいしかないと思います。初めて聞かれたのは、記憶だと最終戦の宮崎の(LPGAツアーチャンピオンシップ)リコーカップの最終日の18番グリーン。下りの“とりあえず速いぞ”っていうパットが残ったとき『どっち(に曲がる)?』と聞かれたんですけど、わからなかったんです。読みにくいグリーンではあるんですが、本当にわからなくて、茂木さんにはこういうときは茂木さんにおまかせしたほうが良い結果が出ると思いますって言ったんです」(佐藤)
そのパットが入ると7位。入らないと10位以下に落ち、賞金が数百万円変わるというパットで、佐藤さんにとっても大きなパットだったと言う。結果は見事にカップイン。ホッとしたことを今でも覚えているとのこと。
佐藤さんは、このときの経験からますます下調べに力を入れるようになり、今ではいつどこでプロに聞かれても、自信を持ってラインを答えられるようになったという。プロキャディも、様々な経験を積んで、実力をつけていくという意味ではプロゴルファーと変わらないのだ。
いずれにせよ、賞金でプレッシャーがかかっているのはプロだけでなく、テレビの画面では見切れているプロキャディたちも同じで、プロの賞金によってボーナスが変動するため、実はドキドキなのだ。だからこそ下調べにも力が入るし、少しでもプロが良いプレーができるように万全を期しているわけだ。
写真/三木崇徳