池に入れたり修理地やらサブグリーンやらカート道路やら……ラウンドに1回くらいは、ドロップを行うことがあるもの。そのやり方が、2019年以降変わる。
現在は直立し肩の高さで腕を真っすぐに伸ばしボールを落とすことになっているが、改正後はひざの高さから落とすことに。ということで、肩の高さからとひざの高さからドロップした場合の違いを実験してみた。
カート道路にボールが止まったため、救済を受けるという状況を設定し、カート道路わきのラフに、まずは肩の高さから白いボールを10球。そしてひざの高さから黄色いボール10球をドロップしてみた。足元のライはゆるやかなつま先下がりだ。結果はご覧の通り。
オレンジ色のひざからドロップしたボールは、ドロップした地点の半径50センチくらいの円内に収まったのに対し、白いボールはおよそワンクラブレングス(約45インチ=114.3センチ)分ほど転がってしまったものも出た。
実験に立ち会ったプロゴルファー・中村修は言う。
「この変更は、はっきり言ってプレーに対してかなり大きな影響を与えると思います。ひとつはプレーの進行に対して。転がりすぎて再ドロップ、ということが減るので、それだけでもかなりの時短効果が見込まれます。そしてもうひとつ、見逃せないのが悪いライにボールが転がってしまうリスクの軽減です」
少しでもいいライに止まることを願いながらドロップしたにも関わらず、ボールは無情にもディボット跡に止まる。そんな悲しい経験はゴルファーなら誰もがしたことがあるはず。ひざの高さからドロップすれば、そのような小さな悲劇が起こる確率は大幅に減りそうだ。また、いいライから打てることも、プレー時間の短縮につながるだろうと中村は分析する。
少しでもいいライに止めようとボールに回転をかけたり、あえて転がしてプレースを狙うなど、ドロップをめぐってはルールギリギリの涙ぐましい試みがないとは言えなかった。それらを今後する必要がなくなることで、プレーファストにもつながるし、フェアプレーにもつながる。
「ゴルファーにとってもありがたく、プレーの進行にも好影響。ゴルフにおけるプレー時間の短縮が世界的課題となるなか、その趣旨に沿った、いいルール変更だと思います」(中村)
規則の近代化へのプロセスは2012年から始まっていて、新しく始めるゴルファーにとってわかりやすく、魅力的で身近なものになるようにすることが念頭に置かれているという。ゴルフがよりスムーズにプレーできる改正ならば、ドロップに限らず、歓迎だ。
写真/有原裕晶