女子ツアーの練習場に小さな異変が起きている。女子プロたちが、計測器を片手にレンジに現れ、一球一球弾道の数値を計測しながら練習しているのだ。今年に入って静かに増えている「トラックマン女子」たちを取材した。

「トラックマン女子」が増えている

トラックマンとは、ゴルフに限らず野球などでも用いられる計測器。ゴルフにおいては、ボール初速、打ち出し角度、スピン量といった弾道の要素だけでなく、クラブの入射角度、インパクト時のフェース面の角度など、クラブの挙動も計測できる。

結果(弾道)と原因(クラブの動き)が同時にわかることで、練習効率が格段に上がることから、これをレッスンに取り入れることが、急速にスタンダードになりつつある最先端器具だ。

女子プロの中に、この器具を“自腹”で購入し、ツアーの練習場に持ち込んでいる選手が増えている。QT(予選会)ランク12位の資格でツアー参戦中の竹内美雪もその一人。

「去年のセンチュリー21レディス(2017年7月開催)から使っています。見ているのは、ドライバーの入射角。少し上から(急角度に)入るクセがあるので、レベルからアッパー軌道になるようにデータを見ながら練習しています」(竹内)

画像: 自腹で購入したという竹内。ドライバーからアプローチまでトラックマンで計測している(写真/2018年のワールドレディス サロンパスカップ)

自腹で購入したという竹内。ドライバーからアプローチまでトラックマンで計測している(写真/2018年のワールドレディス サロンパスカップ)

トラックマンジャパンの公式サイトをチェックすると、最新の「トラックマン4」はお値段303万4800円。それより安い「トラックマン3e」でも160万9200円する。昨年の賞金額が約1360万円だった竹内にとっても、それは決して安い買い物ではなかっただろうが、「もともと、コーチの井上透さんが持ってきてくれていたのを使っていたのですが、自分でも欲しいと思っていました。高いので勢いで買いました!」とのこと。購入した費用以上に稼げるはずだという判断が働いた、ということだろう。

ツアー通算5勝の名手・服部真夕は、つい最近トラックマンを導入したという。

「サロンパスカップから使い始めました。いろいろデータが出るので、面白いですね。ウェッジでキャリーが出ているのか、スピン量なども計測しながら、改めて確認しているところです。まだまだ使いこなせていませんが、いろいろなデータを蓄積していきたいです」(服部)

画像: ツアーのシード常連である服部真夕もトラックマンを愛用している(写真/2018年のワールドレディス サロンパスカップ)

ツアーのシード常連である服部真夕もトラックマンを愛用している(写真/2018年のワールドレディス サロンパスカップ)

ゴルフには飛距離の目安がふたつあり、偶然の要素が強く作用するボールの転がりも含めたトータル飛距離以上に、プロたちが重視するのが転がりの要素を省いたキャリー飛距離だ。トラックマン女子たちが計測器に求める大きな要素のひとつに、「キャリー管理」がある。昨年獲得賞金7位とブレイクした川岸史果は言う。

「数値は入射角を見るくらいで、あとは全番手キャリーをみています。それと、コンバインテスト。30から80ヤードまで、ランダムに指定された距離を打つのをやっています」(川岸)

30から80ヤードは、プロならばベタピンにつけてワンパットで上がりたいレンジだろう。そのときに重要なのは1ヤード単位の正確なキャリー。その距離感を磨くのに、弾道計測器の力を借りているというわけだ。

10数年前、当時世界最強だった女子プロ、アニカ・ソレンスタムは練習場でキャディを数十ヤード離れた地点に立たせ、そこに向けてウェッジでボールを打つ練習をしていた。距離感を磨く練習という意味では似たようなものだが、時代が変われば練習法も変わるものである。

画像: 選手の後ろにズラッと並んだトラックマンは時代の変化を表している(写真/2018年のワールドレディス サロンパスカップ)

選手の後ろにズラッと並んだトラックマンは時代の変化を表している(写真/2018年のワールドレディス サロンパスカップ)

ツアープロコーチ、阿河徹は、トラックマンに代表される計測器の進化により「スウィングを形で見る時代から数値で見る時代になった」という。

「スウィングの設計図を選手と一緒に作り上げるコーチの立場としては、調子が悪くなったときの傾向を、データから読み取るようにしています。その数値を見て、調整を施すわけです。あとは、そのコースの風で、各番手のキャリーはどれくらいなのか、ボールフライト(弾道)のデータを見ることが賢い使い方ではないでしょうか」(阿河)

阿河は、スウィングを数値で見ることが可能になったことで、「選手一人一人に(スウィングの)正解があるようになった」という。数値が正解を示してくれることにより、スランプの期間は短くなり、成長にかかる時間もまた短くなる。そうすれば選手たちはより効率良くレベルアップすることができる。それはツアー全体のレベルを引き上げることにもつながるだろう。もちろん、世界中のツアーで同じことが起きているのだろうが……。

華やかな女子ツアーの舞台裏で、静かな変化は今日も進んでいる。

HONMA

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