ネジらないためのサンドウェッジの練習
――増田プロが理想とする「微笑みながら体を右、左と入れ替えて、きれいな円を描くスウィング」をつくるための練習方法をお伺いしたく思います。
まずはハーフスウィングのショットから始めるといいですね。ほとんどのゴルファーはフルスウィングで動きを覚えようとしますが、最初にハーフスウィングで感覚をつかんだほうが上達は間違いなく早い。ハーフスウィングはフルスウィングを凝縮したものですからね。
それに手を一切使わなくてもボールが打てるハーフスウィング練習は手打ちの矯正になるんです。手でクラブを操作しているうちは正確性はもちろんのこと、体のパワーも引き出せないので飛距離も出ません。体を止めて手で打っていては、「当て上手」にはなれても、「振り上手」にはなれないのです。ハーフスウィングをマスターできれば、それだけで簡単に250ヤード、80台が出ますよ。
――そういわれると、俄然やる気になります。では具体的な方法を教えてください。
使用クラブはSW。SWはパターを除いた13本のなかで最も短く、重いクラブです。その分、手先の動きを使いにくいので、手打ちを抑えるという意味では最適な番手なのです。SWを持ったら、歩幅よりも少し狭めのスタンスをとってハーフスウィングで10ヤード打つのです。

サンドウェッジを持ったら、シャフトが地面と垂直になるところまでバックスウィングし、ボールを打つ。ハーフスウィングなら40~50ヤード飛ぶはずだが、敢えて10ヤードしか飛ばさない
――たった10ヤードですか。
SWのハーフスウィングといっても、通常のスピードでスウィングしたら40ヤード以上、飛ぶと思いますが、敢えて10ヤードしか飛ばさないようにゆっくり動くことがポイントです。始動から最後まで、できるだけゆっくりと、一定のスピードで動き続けるようにすることで、正しい体の動きが身についてくるのです。これが上手くできないのは、今まで手でクラブを動かしていた証拠です。要するに、手を管理できていないのです。頭を止め、手だけでクラブを動かしても、SWで10ヤード打つことはできますが、それでは永遠に飛距離も方向性も安定しません。
わずか10ヤードの距離を安定して打てないようでは、長いクラブを持ったらますます手打ちになってボールをコントロールできなくなってしまいます。頭を動かすことで体を入れ替えて、手を一切使わずボールをとらえる。そういう感覚を体感してもらうのがハーフスウィングの練習です。
ほかにもボールをフォローだけで飛ばす練習も、手打ちの矯正になります。
――SWだとロフトが多いので、ダルマ落としのようになって難しいですね。
どうしてもボールの下を潜って難しいというのであれば、ショートアイアンでやってもいいでしょう。要は手を使わずに体でヘッドを動かすコツをつかむことです。
スウィングから「手打ち」と「弾み」を追い出そう
バックスウィングなしで、いきなりトップの位置からSWでボールを打つことも是非、やって欲しい練習のひとつです。
――これもまた難しいドリルですね。切り返しのタイミングがとれずに、まともにボールに当たりません。
うまくできない人は、「弾み」をつけたスウィングをしています。弾みというのは不確定な要素ですから、ショットがバラついたり、好不調の波が激しい人は、間違いなく手や足のどこかで弾みをつけてスウィングしています。
弾みをつけずにスウィングできるようになるためには、20秒かけて1回のスウィングを行うのもいいですよ。
――ずいぶんゆっくり振るんですね。太極拳のようです。
ゆっくり動けば、弾みがつけられない。手でヘッドを加速させることもできません。また、ゆっくり動くことでスウィングの「あまり」が見えてくるんですよ。

手を一切、使わず、フォローだけでボールを運ぶドリル。正面を向いたアドレスの状態から素早く体をかわし、左を向けばボールは飛んでくれる。サンドウェッジで難しいなら、ロフトの立ったショートアイアンを使ってもいい
――スウィングの「あまり」とは?
簡単にいえば、「無駄な動き」のことです。たとえば、体のどこかに力が入っていたり、体の一部分が止まってしまっていたり、手打ちになっていたりすると、すごく動きにくい部分とか、どうしても動きが速くなってしまう部分が出てきます。それが「あまり」です。ゆっくりと一定の速度で振ることで、その「あまり」部分を発見することができます。
――たしかにゆっくり振ろうとしても、クラブを持つと、手が速く動いてしまいますね。さらにボールを打とうとすれば、もう、手の動きが辛抱できません。
それが歯を食いしばってねじり上げ、手でボールを当てにいくスウィングなのです。辛抱して、ゆっくり振り続けることで、手の動きが抑えられてきますよ。そうしたら、今度は段々とスピードアップしていけばいい。これも腕、手をスピードアップするのではなく、体を入れ替える速度、右を向いた体勢から左を向くスピードを速めてやるんです。この体の「入れ替えのスピードコントロール」が飛距離アップのコツであり、ウェッジなどで距離を打ち分けるためのポイントなのです。
いずれにしても、ねじらず体まかせに振ること、手を使わない習慣を身につけることで、安定したスウィングが手に入り、飛距離が確実にアップします。またいつもいいスコアが残せるようになるのです。
「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る」(ゴルフダイジェスト新書)より
写真/松岡誠一郎