ひと昔前にクラブの高性能をアピールするために突然現れた慣性モーメントという言葉。今では一時期ほどではないものの、クラブの性能をアピールするために度々登場するようになった。そもそも慣性モーメントというのは、物体が回転運動をしようとする時、もしくは止まろうとする時に必要な力を指すもの。軸に対して回転するのにどのくらい力がいるかということを示す値である。ゴルフ界にはこの慣性モーメントで表される値が3つあるのをご存じだろうか。解説しよう。

ゴルフ界には「3つの慣性モーメント」がある

一般的にメーカーがクラブの性能をアピールするために使われるのは、ゴルフ界のひとつめの慣性モーメント「ヘッド左右慣性モーメント」だ。これはヘッドの重心を軸にどれだけヘッドが回転しやすいかを示す値。この値が大きいとインパクトで芯を外した時のヘッドのブレが少なくて済む。つまりエネルギーロスも少なくて済むし、余計なサイドスピンなどもかかりづらくなる。だから慣性モーメントの値が高いと「飛んで曲がらない」と言われるのだ。

ゴルフ界2つめの慣性モーメントは「ネック軸周り慣性モーメント」。シャフトが装着されるネックを軸とした慣性モーメントの値で、これが高いとスウィング中のヘッドのターンにエネルギーが必要になる。簡単に言えば、「ネック軸周り慣性モーメント」が高いとヘッドのターンがしにくいクラブになるため、操作性が低下する。

しかしフェース面が保ちやすいともいえるので目標に打ち出しやすいクラブとも評価できる。反対にこの値が低いとヘッドの操作性が非常に良くなり、テクニックがあればボールコントロールがしやすくなるが、ヘッドの挙動が敏感ともいえるためシビアなクラブとも言えてしまう。

画像: 3つの慣性モーメントを正しく理解しよう

3つの慣性モーメントを正しく理解しよう

ゴルフ界最後の慣性モーメントは「クラブ慣性モーメント」。これはスウィングするゴルファーが軸となり、クラブをスウィングするのに必要なエネルギーの事を指す。この値が高いとクラブをスウィングするのにそれだけパワーが必要となる。つまり重く、長いクラブが高い値を示す。動かすことさえできれば、大きなエネルギーを生むことができるので飛ばせる可能性を秘めているが、ヘッドスピードを出せなければ当然飛距離には繋がらない。

この値は主に、ドライバーやアイアンなど長さの異なるクラブの振り心地を揃える基準として使われることが多い。長めのクラブは軽く、短めのクラブを重くすることでスウィング中の「クラブ慣性モーメント」を揃えることができれば、クラブから感じる抵抗感が同じようになり、ミスを軽減できるとする考え方だ。

ひとつめの「ヘッド左右慣性モーメント」は高いほど良いと思われがちだが、この数値を高くするためには、ヘッドは重くする必要があり、重心位置も深い位置にする必要がある。そうするとクラブとしての使い勝手も特徴のあるものになってくる。それに他のネック軸周り慣性モーメントやクラブ慣性モーメントにも影響してくる。

自分が欲しいと思っているクラブが慣性モーメントをセールスポイントにしていたら試打することをおすすめする。もちろんそれだけがクラブの特性を決めるわけではないが、そういったクラブは合う合わないが比較的はっきりしていることが多いので、数値だけで購入してしまうと痛い目にあってしまうかもしれない。

撮影/野村知也

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