「左利き・右打ち」だからこその動き
多くの右利きのゴルファーは、左手が“引き手”となってリードをしつつ、右手が“押し手”となりボールを押し込んで飛ばしている。ところが、ジョーダン・スピースは実は右打ちだが左利き。そのため、左手リードを上手く使って、ボールを曲げずに飛ばしていると浦は分析する。
「スピースは、利き手である左手の器用さとパワーを生かしながら、クラブをコントロールして飛ばしているんです。体の前面にある筋肉を使って球を“押す”のではなく、左サイドの背中の筋肉で“引っ張る”ように打っています。だからこそ、インパクト前に左足がめくれて、フォローにかけて左ヒジが抜けていく。左利き・右打ちだからこその動きであり、右利き・右打ちの一般アマチュアがそのカタチを真似ると、インパクトのパワーが逃げてしまいます」(以下、浦コーチ)
さらにスピースの特徴として、後ろ足となる右足に重心を残しながらボールにコンタクトしているという。このように、左の背中で引っ張りながら右サイドに重心を残す打ち方だと、本来はティアップを高くしなければ当たらないが、スピースのティは低い。それでも上手く打てるのは、シャフトのしなりを利用しているからだ。
「シャフトのフレックスをアンダースペックに(軟らかく)してしならせることで、ヘッドがシャローに動いてインパクトゾーンが長くなり、低いティアップの球を打ち抜けるんです。また、軟らかめのシャフトで叩きにいくと振り遅れが生じやすく、球が右にスッポ抜けたりするので、ドライバーを打つときはスタンスをクローズ気味にしています。腰が先行して回るのを抑えているんです」(浦)
それでは右利きのゴルファーも、利き手じゃないほうの左手をイイ感じで使って打つには、どんなことをすればいいのか? 浦はショートアイアンを左手一本で持って球を打つドリルを教えてくれた。
左手一本で持つのだが、そのときに右手を遊ばせるのではなく、クラブを持っている左手と同じ力感で左胸をグッと押す。そのまま“大きく・ゆったり”とスウィングするのだ。そして、左ヒジを押さえながらスウィング→左手首を押さえながらスウィング→左手の上に重ねながらスウィング、という順序で右手を徐々にグリップへ近づけていく。そして最後は、通常のグリップに戻してスウィングする。
「こういうステップを踏むことで、右手と左手の力感を同じにしてバランス良く振る感覚が身につきます。そうすれば、利き手である右手が強くなり過ぎないし、左手リードになり過ぎることもありません。スウィングの軸がブレることなく、左サイドの背中を使って引っ張りながら打つことと、それを支える右手の感覚も養える。切り返しでコックが早めにほどけてしまう人も、適度な“タメ”を作って叩けるようになります」
ジョーダン・スピースのいいところを取り入れれば、しっかりとヘッドを加速させながらボールを力強くヒットできる。両手の正しい使い方や力感のバランスを身につけることが飛ばしにつながるのだ!