余計なことを喋らないのも「解説力」
「自分がプレーしてきたことを(交えて)お話できて楽しかったです」。NHKでの初解説の感想をそう表現した丸山。現役時代からそうだったが喋りも滑らかで選手の技術だけでなく心理面もふまえ的確でわかりやすい解説にさすがと思わざるを得なかった。
メモリアルに10回出場した自身の経験に裏打ちされた説得力のある言葉の数々。なにより余計なことは喋らず、視聴者にじっくり見させてくれるところが良かった。
なかには解説者がのべつまくなしに喋り続け、その声が邪魔して選手のプレーに集中できなくなることがあるが、丸山はピンポイントで気の利いたコメントを挟んでいた。
たとえばチリ出身でPGAツアーにデビューしたばかりの19歳ホアキン・ニーマンはジュニア特有のスウィングが抜けきっておらず、それを「インパクトで頭が沈む分、左にクラブが抜けてドロー目の球になる」と解説。
「パッティングでフォローが小さくなるのは左腕が邪魔しているから」などロジカルな分析を口にしていた。
優勝したブライソン・デシャンボーについては独特なフェースの使い方に触れ「これで勝てるんだからまだ伸びしろがある」と24歳の未来に言及。
プレーオフに進出しながら1ホール目で ティショットを右に曲げラフからのショットに苦戦し脱落したカイル・スタンレーは「あれだけ(本戦で)いいプレーしていても1打でああいうことになる。ちょっとした油断が相手につけ入る隙を与えてしまうのかな」とゴルフの核心をついたコメントが続いた。
そういえばゲーリー・プレーヤーが今年3月にツイッターで「思うにニック・ファルドがPGAツアーのテレビコメンテーターとしてもっとも素晴らしい。大袈裟に騒がない、えこひいきしない、ありのままを伝えている」とつぶやいていた。
解説者だけでなくアナウンサーも大袈裟に興奮するタイプがときどきいるが、伝える側が興奮すれば観る側は醒めてしまう。
ゴルフというゲームの本質を知り、それを俯瞰で眺めて客観的に噛み砕き、自分の言葉で語れる丸山やファルドのような存在は貴重だ。
撮影/姉崎正