プロギアの「RS」といえば“ギリギリ”をキーワードに、フェース面の反発を文字通りギリギリまで高めたことによる飛び性能の高さが売りのモデル。今回発表された「新RS」と「新RS-F」(以下、RS及びRS-F)も同じコンセプトで開発されている。
その最大の注目点は、やはりフェース面になるだろう。「ギリギリ」が謳い文句だけに、今回はさらなるギリギリを追求するため、フェース面の反発の測定器自体をわざわざ自社開発したというから恐れ入る。
自社開発の測定器を用いて全量検査を行うことで、フェース面の反発がルールギリギリでない商品は再研磨し、違反の恐れのあるものは廃棄という手間をかけた結果、ルールの範囲内で、まさにギリギリの飛びを手に入れたというのがメーカーの説明だ。その上で、反発係数だけを高めたのではなく、ミスヒットしても飛ぶように、高初速エリアの拡大にも注力してあるという。
ラインアップは変わらず2機種。「ドローが打ちやすい」RSと、「フェードが打ちやすい」RS-Fだ。今回からRS-Fのみカーボンクラウンとなっているのが実は大きな変更点だが、見た目には“カーボン感”はあまりない。クラウンをカーボンにすることで軽量化し、それによって生まれた余剰重量をフェース側とバック部に配することで上下の打点ブレに強くすることが目的であるようだ。
RS-Fをすでにテストしているプロギア契約プロの矢野東は言う。
「新しいクラブは前のモデルより良くなっているのが前提として僕は打っている。そういう先入観もあるかもしれませんが、距離が出ている気がします。最近、よく芯を外すんですが、それでも距離が変わらないからいいクラブかなって思ってます(笑)」(矢野)
これは、怪我からの復帰の途上である矢野ならではの“自虐コメント”だが、同席したツアープロコーチの内藤雄士が「トウやヒールに当たっても距離がほとんど変わっていないんです。打感はトウやヒールに当たっていることがわかるのに、距離が変わらない。ちょっと不思議な感覚でした」とコメントしていることからも、今回のニューモデルは多少芯を外しても飛距離が落ちないモデルであることがうかがえる。
反発性能を高くし、エリアを広くした。一言でいえば、「正常進化」(内藤)ということのようだ。RSをテストした原江里菜も「飛距離は伸びている」と証言している。
さて、とにもかくにもゴルフクラブは打ってみなくてはわからない。前置きは以上にして、みんなのゴルフダイジェスト編集部員でプロゴルファーの中村修が試打をした、そのインプレッションを聞いてみよう。
「打感が良くなりましたね! もともと弾きの良さで人気のクラブですが、今回はシャキッとした中に軟らかさのあるいい打感になっています。RS-Fのほうは、カーボンクラウンの影響なのか、さらに打感を軟らかく感じます」(中村)
両モデルの特徴がよくわかるのが、その球筋。実際に、ドローが打ちやすいRSはドローが出て、フェードが打ちやすいRS-Fはフェードボールが出た。
「評価したいのは、ドローが出る、フェードが出るということ以上に、RSなら右へのミス、RS-Fなら左へのミスがなかったことです。このクラブのメインターゲットである中上級者にとって、“逆球が出ない”というのは大きなメリットですね」(中村)
打音に関しては、記者発表の席上で矢野東が「(プロ向けに打音を)いじってくれているのかと思った」と発言している。打音は、ヘッド内部に発泡剤などを入れることにより、低くすることができる。低い音を好む矢野のために、メーカーが気を利かせて低めの音にチューニングしてくれていると思ったほど、“吊るし”の状態でプロ好みの打音になっているというわけ。打音を言葉で表すのは至難だが、プロ好みの打音とは「キーン!」という金属音ではない、締まった音のことだ。
さて、それぞれヘッドスピードを47m/s前後に揃えて10球ずつを打った結果、トータル飛距離でRSは平均280.2ヤード、RS-Fは平均287.1ヤードという上々の結果を得た。RS-Fのほうが7ヤードほど飛んでいるが、これには理由がある。
「試打を行ったのはニュー南総ゴルフ倶楽部の1番ホールでしたが、このホールは右ドッグレッグのホール。なので、RS-Fのほうが気持ち良く振ることができたんです。試打ホールが左ドッグレッグだったら、逆の結果になっていた可能性もあります」(中村)
一般に、ドローボールはフェードボールに比べて球筋が低くなる傾向があるが、RSはRS-Fに対してややボールが上がりやすく、そのためか両モデルの弾道の高さは良く似ていた。具体的にはRSで14.5度、RS-Fで15.5度の中〜高弾道だ。プロ・上級者向けのクラブとしてはやさしめの味付けと言っていいだろう。
モデルごとに大きく変えるのではなく、少しずつ性能を磨き続けている印象のある「RS」シリーズ。今回も、着実に“前進”している印象だ。
取材協力/ニュー南総ゴルフ倶楽部 撮影/姉崎正