国内女子ツアー37試合うち前半戦の17試合が終了した。「アース・モンダミンカップ」で2位に3打差をつけ今季2勝目を挙げた成田美寿々は獲得賞金1億円を歴代最速で超えた鈴木愛を約3000万円差で追う。女子プロ界を牽引する鈴木と成田の「すずなり時代」の到来なるか?

比嘉真美子も黙ってはいない

2018年の国内女子ツアーは、鈴木愛の圧倒的な強さが際立っている。11試合に出場し、優勝3回を含め、トップ3入りは驚異の10回。出場すれば優勝するか、しないまでも優勝争いには絡む。獲得賞金は早くも1億円を超えた。

トップテン率1位の鈴木愛に対し、2位は比嘉真美子で16試合中10試合でトップテン入りしている。以下、3位シン・ジエの8回、4位タイに6回の勝みなみ、永井花奈、成田美寿々と続く。

画像: 出場した11試合中10試合でトップテン入りを果たしている鈴木愛。年間獲得賞金もすでに1億を超えている(写真は2018年のニチレイレディス 撮影/大澤進二)

出場した11試合中10試合でトップテン入りを果たしている鈴木愛。年間獲得賞金もすでに1億を超えている(写真は2018年のニチレイレディス 撮影/大澤進二)

賞金ランクでは1億超えの鈴木を3000万円差で成田が迫り、さらに少し離れて比嘉が追うという展開。現在のツアーは、鈴木と成田、そして比嘉を中心に回っていると言える。この3人を、データから比較してみよう。まずはドライビングディスタンスから。

比嘉真美子254.06Y(3位)
成田美寿々246.23Y(12位)
鈴木愛240.02Y(26位)

鈴木愛よりも、比嘉、成田のほうが順位は上だった。比嘉と鈴木は、平均で15ヤードも飛距離差があるということをデータは示す。ではトータルドライビング(飛距離順位とフェアウェイキープ率の順位を合算したランキング)はどうだろうか。

比嘉真美子(1位)
成田美寿々(3位)
鈴木愛(5位)

ドライビングディスタンスでは26位だった鈴木愛が5位まで上昇、フェアウェイキープ率の高さがうかがえる。比嘉はこのランキングで堂々の1位で、ツアー最強のショットメーカーと言ってもいいだろう。

そのことは、パーオン率のランキングにも現れる。

比嘉真美子73.0159%(1位)
成田美寿々70.9877%(4位)
鈴木愛70.7516%(5位)

比嘉真美子はパーオン率も1位。飛距離、フェアウェイキープ率ともに高水準であるから、自然とパーオン率も高くなるわけだ。ただし、成田、鈴木も非常に高水準で、強さが見える。

試合に勝つためには、バーディを多く奪う必要がある。続いては1ラウンドの平均バーディ数を比較してみよう。

鈴木愛4.2941個(1位)
成田美寿々3.7778個(2位)
比嘉真美子3.4694個(5位)

今年の女子ツアーで1ラウンド平均4つ以上のバーディを奪っているのは鈴木愛ただ一人。バーディ数では鈴木愛の強さが抜きんでている。とはいえ、成田、比嘉もしっかりと上位に食い込んでいることがわかる。ただ、ここまでは鈴木、成田、比嘉はデータ上ほぼ互角に近い。

鈴木と成田、そして比嘉に「差」が生まれるのが、やはりグリーン上の指標だ。パーオンホールでの平均パット数を見てみよう。

鈴木愛1.7222(1位)
成田美寿々1.7739(4位)
比嘉真美子1.8040(15位)

ここでは、比嘉真美子の伸びしろがはっきりと見えてくる。パーオン率が高い比嘉だが、一方でパットのミスでチャンスを逃す回数も他の2人に比べると多い。

画像: 最強のショットメーカー・比嘉はパーオンホールでの平均パット数が課題(写真は2018年のサントリーレディス 撮影/姉崎正)

最強のショットメーカー・比嘉はパーオンホールでの平均パット数が課題(写真は2018年のサントリーレディス 撮影/姉崎正)

では、1ラウンドあたりの平均パット数はどうだろうか。

鈴木愛28.0294(1位)
成田美寿々29.6444(41位)
比嘉真美子29.8571(58位)

1ラウンドあたりの平均パット数の差はスコアの差に直結する。鈴木愛は、成田、比嘉に比べてグリーン上で平均で1.5打以上スコアを稼いでいることになる。これが3日間、4日間積み重なれば、その差はさらに大きくなる。パーオンホールでのパットは悪くなかった成田が急激に順位を落としている、その理由は次のデータ、リカバリー率で見えてくる。

鈴木愛74.3017%(1位)
比嘉真美子68.0672%(5位)
成田美寿々60.4255%(57位)

リカバリー率とは、パーオンを逃したホールでパーより良いスコアで上がる確率のこと。アプローチが成田の伸びしろだということだ。パーオンホールでの数値に比べ、1ラウンド通しての平均パット数で順位を下げているのはアプローチで寄せ切れずにパット数がかさんでしまうホールが多いということだ。

画像: 成田は1ラウンドあたりの平均パット数、リカバリー率で順位が落ちた(写真は2018年のサントリーレディス 撮影/姉崎正)

成田は1ラウンドあたりの平均パット数、リカバリー率で順位が落ちた(写真は2018年のサントリーレディス 撮影/姉崎正)

まとめると、やはり鈴木愛が現時点で「最強プレーヤー」なのは間違いがない。成田はアプローチ、比嘉はグリーン上に改善点が見られるが、鈴木にはほとんど穴がないと言っていいからだ。

一方、勝てる試合を確実に勝ち切る、数字に表れない成田の強さもとくにここ最近は際立っている。ここ3試合で2勝挙げた要因はショットにプラスしてパッティングの向上が大きい。優勝したサントリーレディス、そしてアース・モンダミンカップではともに平均パット数1位。このあともパッティングの好調が続くようなら、鈴木愛と成田の一騎打ちになる可能性までありうる。もちろん、比嘉真美子も好調をキープしていおり、黙ってはいないだろう。

鈴木愛「一強」となるか、鈴木愛と成田美寿々の「二強」となるか、そこに比嘉も加わった三つ巴となるか。アン・ソンジュ、シン・ジエの韓国勢、さらにはルーキー勝みなみ、ここにきてグッと実力を増した感のある岡山絵里、永井花奈らも虎視眈々と上位を狙う。

強い選手がいて、ライバルがいて、その背後にもいい選手たちが控える。女子ツアーが面白いわけである。

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