水に濡れた状態でボールを打つと弾道はどう変わるのかをウェッジで実験したところ、スリップしてバックスピンが減り、打ち出し角度が上がるという結果が出た。果たして、ドライバーやFWでも同じような現象は起きるのか? ギアライターの高梨祥明が実験してみたら、意外な結果が!?

なんと水に濡れるとバックスピンが増加! 初速はダウン!/ドライバー編

雨でフェースが濡れたら、弾道はどう変わる? を試してみた。

画像: 実験に使ったクラブ。ドライバーには打球面には溝はなし。FWにはしっかり溝がある。

実験に使ったクラブ。ドライバーには打球面には溝はなし。FWにはしっかり溝がある。

実験方法はとても簡単。まずドライ条件で5球打ち、次にジョーロで水をフェースとボールにかけて5球。それぞれの平均データを比較した。ウェッジ実験(編注:同様の実験をウェッジで行ったところ、スピンが激減して、打ち出し角度が上がった)を念頭におけば、水に濡れるとスリップしてバックスピンが減り、打ち出し角度が上がるのではないかと推察できるが……。結果は意外なものだった(表1参照)。

画像: 表1。ドライバーのフェースとボールが濡れた状態と乾いた状態でそれぞれ打った結果

表1。ドライバーのフェースとボールが濡れた状態と乾いた状態でそれぞれ打った結果

正直言えば、なぜそうなったのかはわからないが、ドライバー(10.5度)でのドライ&ウェット実験では、ご覧のようにバックスピンは増加した。その差700回転/分というのはかなりの増加といえるし、ボール初速も落ちている。なんとなくだが、ボール本来の性能(スピンや反発)が使えていないような、手に残らない軽い感触も気になった。

よくディスタンス系のボールの開発話で出てくるのが、インパクトでの“リコイル”と呼ばれる現象。これはある一定時間ボールとフェースがインパクトで接触していると、ボールにはバックスピンとは逆向きの力が加わるため、相対的なバックスピンを減らすことができる、というものだ。

つまり、ボールとフェースは超反発的にぶつかってすぐ離れればいいというものではなく、しっかりと接触時間をコントロールして、もっとも効率良く飛ぶ初速とバックスピンのバランスがとられているわけだ。

画像: タイガー・ウッズ用に作られたナイキ初期のドライバー。溝がしっかりあり、さらにフェース面は深めのヘアラインが縦方向に入れられていた。当時の開発者はこれについて、「ヘッドスピードが50m/s以上になると、わずかな水滴でボールの挙動が不安定になる。だから極力、水はけをよくしている」と語っていた。

タイガー・ウッズ用に作られたナイキ初期のドライバー。溝がしっかりあり、さらにフェース面は深めのヘアラインが縦方向に入れられていた。当時の開発者はこれについて、「ヘッドスピードが50m/s以上になると、わずかな水滴でボールの挙動が不安定になる。だから極力、水はけをよくしている」と語っていた。

ボール、フェース双方に水がかかってしまうと、どうもこの接触時間が短く感じられ、リコイル現象もないし、ボールのエンジンでもあるコアの力もちゃんと使えていないような気がするのだ。あくまで後付けの感覚でしかないが、雨でボールやドライバーのフェースが濡れただけで、飛距離は落ちる可能性は高い、ということだけは間違いないようだ。

ロフトが多少増えても結果は同じ!?/FW編

では次に、5W相当(18度)のFWでのウェット&ドライ実験の結果も見ていこう。ロフトが寝たぶん、ドライバーよりもスリップしやすいはずだが……(表2参照)。

画像: 表2。FWのフェースとボールが濡れた状態と乾いた状態でそれぞれ打った結果

表2。FWのフェースとボールが濡れた状態と乾いた状態でそれぞれ打った結果

むむむ、である。結果は上記の通り、やはりスピンは微増している。打ち出しも高くなるどころか、やや低くなった。これではドライバーと同じく、濡れたらFWも飛ばなくなる、というしかない。ボールがフェースの上でスリップするなんてことは、ウッドのロフト領域ではほとんどないのかもしれない。

ちなみに現行のルールでは、フェースの溝の縁の鋭さの制限は25度以上のクラブからとしている。このあたりを鑑みても25度未満のロフトの場合、あまり水や芝などの介在物によって、スピンが著しく変わったりしないと考えられる。

いずれにしても、雨水にボールやヘッドを濡れたままにしておくと、正確な距離は刻めなくなる。ティグランドではなるべくボールもヘッドも濡らさないようにし、フェアウェイ上でも少なくともフェースの水分をしっかりぬぐってから打ちたいものである。

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