起伏のあるコースで真っすぐ立つ、構える
――コースにはティグラウンドといえども平らなところがほとんどなく、傾斜だらけです。こうした斜面への適応力が、すなわちハンディキャップのような気がするのですが。
おっしゃるとおりです。ゴルフが上達する、スコアがよくなるというのは斜面に対して正しく対応できる頻度が増すということ。すべてのショットで斜面に正しく対応できれば、どんなに見た目はかっこ悪くともスクラッチということですね。反対に「練習場シングル」という言葉があるように、スウィングはキレイだけど、傾斜にまったく対応できないゴルファーがいる。もちろんゴルフはコースに出てスコアを競うものですから、どちらがいいかはいうまでもありません。
――斜面に対して正しく対応するとは、どういうことでしょうか。
どんな斜面でも「真っすぐ立って、スウィングを変えない」ということです。
――まず、どんな斜面でも真っすぐ立つとはどういうことでしょう。
普段歩くときにわざわざ体を傾けて歩く人はいません。不自然な体勢では、うまく歩くことができないし、すぐに疲れて長時間歩くこともできません。それと同じように、ゴルフでもバランスのよいスウィングをするためには、必ず真っすぐ立つことが前提になります。私のいう真っすぐ立つ状態というのは、文字通り、斜面に関係なく全身が真っすぐになっている状態、頭の先から体を串刺しにしたとき、正面からその串が真っすぐに見える状態です。串が左右に傾いている状態ではありません。
――つまり、斜面なりではなく、重力に対して真っすぐ立つということですね。よく増田プロがアドレスに入る前にクラブを体の正面かに立てるようにして直立する姿を見ますが、それと真っすぐ立つこととは関連があるのでしょうか。
私がアドレスルーティンとして直立するのは、体の中心線、つまり串を真っすぐするためです。その姿勢から前傾していけば、真っすぐ立ったアドレスができます。コースは練習場と違って、常に平らなライから打てるわけではありません。様々な傾斜で打ったり、打ち下ろしや打ち上げのホールで目線が変わったりしているうちに、真っすぐ立つ感覚にも微妙なズレが生じてくる。
たとえば、ずっと左足下がりが続いたあとに、平らなライがくると、人は左足下がりに感じるんです。知らないうちに左足の下がった状態を真っすぐだと勘違いしてしまうわけです。そうした錯覚はプロゴルファーといえども必ずありますし、コースは錯覚に満ち溢れています。つまり上級者とアベレージの決定的な違いは、そうした錯覚、ズレを修正してからアドレスに入るか、だまされたままアドレスしてしまうかなのです。
――たしかに傾斜の錯覚というのはありますね。どうしたら、設計家の罠を見破り、常に真っすぐ立つことができるのでしょう。
アドレスに入る前に、自分がトランポリンに乗っているイメージで軽く2~3回ジャンプしてみるといいでしょう。体がちょっとでも前後左右に傾いていたら、トランポリンで真っすぐ飛び上がることはできませんよね。何度飛んでもバランスを崩さず、真っすぐ上がって同じ場所に着地するには、足の先から頭のてっぺんまで真っすぐに保っていないとできません。
「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る」(ゴルフダイジェスト新書)より
写真/横山博昭