ジャンボの言葉をかみ砕く通訳の役割
ステップアップツアー2勝を挙げ、さらには前半戦の活躍でリランキングリストの28位に入り40位以内に与えられる9月後半までの出場権を得た原は、ジャンボ尾崎に弟子入りしていることで話題になりました。先日行われたアース・モンダミンカップで話を聞くため会場を訪れたところ、原のキャディをジャンボの息子・尾崎智春が務めていました。
基本的にはキャディ、マネジメント役として原を支えているようですが、コーチ役も担っているようです。
「技術的なアドバイスはスランプにならないように、アライメントやスウィング中のクラブの動きなどのズレをチェックすることがメインです」(尾崎)
尾崎将司を中心とした「ジャンボ軍団」は、ジャンボがトップダウンで技術を教えるという組織ではありません。軍団の各々が高いプロ意識を持ちながら集団を形成して、一緒に練習やラウンドをすることでお互いの技術を高めあっているのです。
「ジャンボさん(智春は実の父・将司のことをこう呼ぶ)は、何を目指すべきか、どうなるべきかという大きなビジョンを与えてくれます。技術的なことはポツポツとヒントを与える程度です。そこから選手自身が意図をくみ取って、自らの動きと照らし合わせて吸収をしていくのです」
とはいえ、ジャンボの元を訪れて間もない原は、すぐにすべてを理解する事ができません。そこで智春氏がいわば「通訳」のような橋渡し役となってアドバイスを行っているようです。
「数試合こうして一緒にいますが、彼女は練習に取り組む際の集中力が抜群に高い。僕は小さいころからトッププロを間近に見て一緒に練習してきたけれど、そういった選手と比べても根性があるというか、負けず嫌いですね。彼女は妥協という言葉が嫌いなので、一度決めたことはそれが達成されるまで決してあきらめないですね」(尾崎)
智春に話を聞いた後、原にインタビューをしようとパッティング練習が終わるのを待っていましたが、14時半から始まった練習は日が傾き始めた17時になっても終わることはありませんでした。残念ながら次の予定があったため、なぜジャンボに弟子入りをしたのか、具体的にどんなことを教わっているのか、気になるトコロは次回聞いてみようと思います。
同じ距離をただひたすら転がし続けられる「努力する才能」
長いパッティング練習の半分以上で、2メートル前後の同じ距離を丁寧に転がし続けていた原。そんな忍耐強い彼女を見て、「僕は忍耐強く取り組むのが得意なタイプではないから、彼女のひたすら続ける姿勢は尊敬していますよ。」(智春)と謙遜しながら語っていました。
ただ原のように、ある課題に対して同じことをやり続けることは、多くのプロは理解していてもそうそうできるものではありません。「努力する才能」という言葉がありますが、忍耐強く課題に取り組むことはそれだけで上を目指せる可能性があるという事なのです。
「まだまだ技術面は粗い」(智春)と言っていましたが、裏返せばのびしろがあるといえるでしょう。バッグを担ぐのは前半戦で終わりで、今後は原のポテンシャルを最大限発揮できるようにマネジメントなどの面で支えていく予定だと言います。
原の忍耐強いパッティング練習を見ていて、かつてデビッド・レッドベターが「あんなに練習をする選手は、そうそういない」とリディア・コを称賛していたことを思い出しました。一時代を築き上げたレジェンドの教えを忍耐強い練習で体に覚えこませたとき、また一人、世界で戦えるプロが生まれてくるに違いありません。