世界最古のメジャー・全英オープン。スコットランドのカーヌスティで行われた第147回大会で優勝を飾ったのはイタリアのフランチェスコ・モリナリだったが主役は間違いなく3打差の6位タイに終わったタイガー・ウッズその人だった。

最終日の6番パー5、トップに並んでいたジョーダン・スピースが第2打をブッシュに打ち込みダブルボギーを叩き一歩後退。そのときだった。リーダーボードの変化にスピースが激しく動揺したのは。

「ボードを見たらタイガーがトップに立っていた。思わずマイケル(キャディ)にいったよ。ほら、見てみろよ、案の定だ。もう10年もメジャーで優勝争いをしていないタイガーがついに牙を剥いたんだ。そして自分にこういい聞かせた。大丈夫、なんでもない。これ(タイガーと優勝争いするの)が夢だったんじゃないか!」

前半2つのバーディを奪って単独トップに立ったタイガーの存在はいまをトキめく“キッズ(若手)”を慌てさせるのに十分だった。

画像: 一時は単独首位に立っていたタイガー・ウッズ(写真は2018年の全英オープン)

一時は単独首位に立っていたタイガー・ウッズ(写真は2018年の全英オープン)

14番で15メートルのイーグルパットを沈め2位タイに食い込んだローリー・マキロイはいう。「(タイガーの組から)大歓声が聞こえていた。ビッグネームがリーダーボードを賑わせていたけれど、状況的に勝つのはタイガーだと思っていた。それならこっちはパーティを台無しにしてやろうって決めたんだ」

最終組をスピースと回ったザンダー・シャウフェレは10年前タイガーが最後にメジャーに勝った全米オープンを地元(サンディエゴ)のゴルフ少年として観戦していた日を思い出していた。

雲の上の人だったタイガーとリーダーボードで肩を並べている状況に興奮しながらバーディありダブルボギーありの浮き沈みのあるラウンドを終え「カオスのような内容だったけれど(優勝争いができて)よかった」と大きく息を吐いた。

シャウフェレが25歳、スピースも来週25歳の誕生日を迎える。“キッズ”たちを相手に42歳のタイガーは頑張った。

「ここ数年苦しかった時期を思うとこうしてメジャーで優勝争いできたのが夢のよう。ファンの声援はすごく励みになった。リンクスに帰ってこられて味わったこの感動は決して忘れない」(タイガー)

どん底から這い上がったヒーローは終始落ち着いていた。派手なガッツポーズもなくミスを大袈裟に悔しがる素振りもない。「終始自分のゴルフをコントロールすることができた」と本人。

スピースやマキロイと同じように我々ファンもタイガーの復活優勝をどれほど切望しただろう。だがそのときは確実に近づいている。今季4度目のトップ10入りで世界ランクは50位以内に浮上することが決まった。全米プロや過去8勝と得意のWGCブリヂストン招待でも勇姿を見られるはず。タイガーがトロフィーをかき抱く姿を想像するだけでワクワクする。

写真/姉崎正

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