契約フリーのプロたちはどんなクラブを使ってる?
全英オープンは、フランチェスコ・モリナリの優勝で幕を閉じた。これで今年のメジャー大会は、クラブ契約がフリーの選手が3連勝したことになる。
これまではクラブ契約を行うことがトッププロの証であり、クラブメーカーの評判や印象を大きく左右するものだった。これほどクラブ契約をしない選手が活躍したケースは、今までになかったことだ。
マスターズに勝利したパトリック・リードは、キャロウェイのプロトタイプアイアン「MB-1」に、ピンのドライバー「G400 LSTec」を組み合わせたセッティングだった。安定感のあるティショットがオーガスタ攻略に大いに貢献していたのは記憶に新しい。
ブルックス・ケプカは、ナイキのクラブ事業撤退の後、近年の名器として評価の高い「M2」(2016年モデル)ドライバーと、日本未発売のミズノ「JPX 900 TOUR」アイアンを選び、昨年の全米オープンを制した。今年は、世界ランキング上位者がこぞって使っているテーラーメイド「M」シリーズの中から、「M3 460」を選んで連覇を達成している。
モリナリは、パター以外のクラブをすべてテーラーメイドで揃えているが、全英では、3番ウッドにロフト角13度の「M3」を選び、「P790 UDI」という日本未発売のアイアン型ユーティリティを入れるなどの工夫をしている。
ちなみに、ボールはテーラーメイド契約プロの多くが使う同社のボールではなく、タイトリスト「PRO V1X」を使用している。
日本国内でもクラブ契約フリーの選手が活躍するケースが目立つ。国内の男子ツアーでは、池田勇太、宮里優作と二年連続でクラブ契約を持たない選手が賞金王になった。池田はプロギア「RS-F」、宮里はピンの「G」、そして「G400LSTec」と、両者ともドライバーを変更したことが飛躍のきっかけになった。
契約選手でも、細かな調整を繰り返すのがトレンド
なぜ、クラブ契約フリーとなる選手が増えてきているのか。
ひとつは頻繁にモデルチェンジする昨今のメーカー事情の中で、契約メーカーの新モデルが合わないリスクがあることだ。クラブを変えたことでスランプとなることも少なくなく、選手としては死活問題になりかねない。
しかし、もっとポジティブな理由のほうが大きな要因だろう。メーカーが熾烈な開発競争を行い、より優れたクラブを生み出す中で、自分の使いたい道具でプレーしたいという選手が増えているのだ。
そこで、より問われてくるのが、選手たちがクラブを選ぶ目利きの重要性だ。どんなプレースタイルでプレーするか、そのためにどのクラブを選ぶかを見定めなくてはならない。現代のクラブは、シャフトの種類は豊富で、ウェイト位置などの微調整も行って、より扱いやすい道具にしていくことが不可欠だ。
もっともこれは、クラブ契約フリーの選手に限ったことではない。ダスティン・ジョンソン、ローリー・マキロイ、ジャスティン・ローズなど毎年クラブを最新モデルに一新しながら、好成績をあげ続ける選手たちは、自分に合うクラブを選び、必要に応じてスペックを調整する能力に非常に長けている。
タイガー・ウッズでさえ、現在はドライバーのウェート位置を頻繁に変更し、ときにはシャフトを変えてと試合ごとに調整を繰り返している。長年使用して手に馴染んだクラブをいつまでも使う職人気質のプロは、少数派になっている。
最新クラブの機能を熟知し、自分に合うように適切に調整するスキルが、現代のトッププロには必要不可欠だ。個性的なクラブ選びの契約フリー選手が、メジャー3連勝した事実はその事を如実に示していると言えるだろう。