アメリカを代表する若きエース、レクシー・トンプソン(23歳)が来週行われるメジャー、全英リコー女子オープン(ロイヤルリザム&セントアンズ)を欠場すると自身のインスタグラムで表明した。世界ランク5位のレクシーになにがあったのか?

25日にアップされたインスタグラムの文面に衝撃が走った。

「皆さんにお伝えしたいことがあります。全英リコー女子オープンを欠場することにしました。権威あるメジャーでプレーしないという選択はとても難しいものでした。でも私にはいま自分自身を見直す時間が必要なのです。ゴルフだけでなくプライベートでもこの1年半は精神的、感情的にさまざまな犠牲を強いられ、自分が自分でいられなくなる瞬間もありました」

「そこでしばらくゴルフから離れ心のバッテリーをチャージする時間を作ることにしたのです。インディ・ウィメン・イン・テック(8月16日開幕)ではディフェンディングチャンピオンとして出場します。皆さんにはそのときお会いできればと思っています。 レクシー」

ケガで試合に出場できないというケースは多々あるが「自分を取り戻すため」という理由で欠場する例はあまりない。それをインスタグラムで自身の言葉で伝えるという手法もイマドキだ。

ゴルフというゲームは勢いのある選手が強い。レクシーにもそういう時期はあった。10代の前半から注目され15歳でプロ宣言すると翌年、当時のツアー最年少優勝記録を塗り替えナビスターLPGAクラシックで優勝。毎年コンスタントに勝星を挙げこれまでにメジャー1勝、ツアー通算9勝を挙げてきた。

画像: 8月16日開催のインディ・ウィメン・イン・テック選手権では華やかな笑顔で連覇なるか(写真は2017年のサロンパスレディス)

8月16日開催のインディ・ウィメン・イン・テック選手権では華やかな笑顔で連覇なるか(写真は2017年のサロンパスレディス)

16歳で彼女が優勝したとき宮里藍がこういっていたのを思い出す。「飛距離だけじゃなく彼女はボールコントロールが上手いんです。状況によってフェードもドローも打ち分けられる。強くなると思っていました」

10代の頃のレクシーはゴルフが楽しくて仕方がなかったに違いない。兄もプロゴルファーというゴルフ一家に育ち、寝ても醒めてもゴルフのことを考えてきた。その情熱に比例するように期待通りの結果を出してきた。

しかしゴルフは決して右肩上がりのときばかりではない。昨年のANAインスピレーションズでは後続を大きくリードし優勝目前までいきながら視聴者からの指摘で4打罰を受けメジャー2勝目を逃している。今季は5回トップ10入りしているが優勝はなく、あくまで推測だがモヤモヤが募っていたのかもしれない。

今週開催の国内女子ツアー、大東建託・いい部屋ネットレディスで解説を務める小田美岐さんがこんなことをいっていた。

「勢いのある選手はなにをやっても上手くいくんです。でも一旦悩み出すとキリがない。何勝もしている選手が突如ティグランドに上がるのさえ怖くなってしまったりする。私が現役時代は調子が悪いと“なんで私はケガをしないの? ケガをすれば試合に出なくてすむのに”というところまで追い詰められました。経験を積めば積むほどゴルフの怖さを感じてしまう。ラウンド中考える時間がたっぷりですから精神を保つのが難しいんです」

レクシーの悩みは本人にしかわからない。だがゴルフは技術があれば勝てるというものではない。彼女には心のバッテリーチャージが完了したら再び華やかな笑顔で表舞台に戻ってきてもらいたい。

撮影/岡沢裕行

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