昨今のトレンドとして、ドライバーは1ブランドにヘッドを複数ラインナップする傾向がある。例えば、テーラーメイドではMシリーズにM3とM4、キャロウェイは、ローグシリーズにローグスター、ローグ、そしてローグ サブゼロ。ピンは同ブランドに4つもバリエーションがある。国内メーカーでもPRGRはRSシリーズでRSとRS-F、ダンロップでは、Z585、Z785といった感じだ。
近年のクラブ開発は、ブランドごとに腕前やヘッドスピードなど想定ゴルファーを絞って行っている。なおかつ弾道調整機能やウェート交換システムなど、アジャスト能力に優れたクラブが多くある現在、1ブランドに複数ヘッドを作る必要がないようにも思える。実際のところはどうなのだろうか。
とあるクラブデザイナーに取材したところ、「ヘッドの基本設計はロフトやウェートの位置を少し替えたぐらいでは大きく変わらない。より様々なゴルファーに合わせる為には、どうしても複数ヘッドは必要になる。同ブランドの中で複数モデルが生まれるようになったのは、明確なブランドイメージを発信しつつ、その中で性能の違うモデルを用意することでわかりやすさを狙っているのでは?」とのことだった。
今のドライバーは、ヘッドの反発力がルールで制限されているので、飛ぶとユーザーに言わせるためには個々のゴルファーのパワーを効率よく引き出すしかない。昔のクラブのようにモデルチェンジするごとに反発力を高め、同じスウィングでも飛ぶといったクラブはもう作れないからだ。
だから様々なゴルファーを想定し、性能の異なるクラブを複数出す必要が出てくる。しかしそれらすべてをバラバラのブランドで出すとプロモーションにお金もかかるし、かえって埋もれてしまう可能性があるようだ。
大手ショップ店員によると同一ブランドに性能の違うヘッドを複数用意すると、そのブランドに興味を持って、全モデル打っていくゴルファーが多いそうだ。似た性能を持った別々のブランドのクラブを勧めた場合は、片方が気に入れば、ブランド力がないともう片方は手に取ってもらえない可能性が高くなるという。
同一ブランドで複数ヘッドを出しておけば、たとえひとつのヘッドが合わなくても別の兄弟ヘッドでそのゴルファーの飛距離を効率良く引き出すことができれば、「このブランドは飛ぶ!」となる。その評価が口コミで広がればブランドイメージが向上し、より多くのゴルファーに手に取ってもらいやすくなるのだ。
そもそもなぜこんなにヘッドの種類が必要なのかというのは、使うゴルファーのスウィングタイプもたくさん種類があるから。それぞれのスウィングの個性に合わせてヘッドを選ぶことで初めてヘッドスピードに対して最大限の飛距離を追求することができる。
それがどんなにAさんが飛ばしたクラブだとしても、Bさんも飛ばせるとは限らないのだ。兄弟モデルを試打する機会があったら、是非打ち比べてもらいたい。
大抵の兄弟モデルは「つかまり性能を高めた」モデルと「つかまり性能を抑えた」モデルのふたつのパターンが多いので、右のミスが嫌な方は前者、左のミスが嫌な方は後者を基準に打ち比べてみてほしい。道具は関係ない、ゴルフは腕だ! なんて言えなくなるかも!?
撮影/有原裕晶