日本人選手が海外経験を積み重ねはじめた
全英オープンに挑んだ10名の日本人選手たち。まずは、改めてその成績を見てみましょう。
小平智 35位タイ
川村昌弘 39位タイ
宮里優作 47位タイ
池田勇太 51位タイ
松山英樹 予選落ち
時松隆光 予選落ち
谷原秀人 予選落ち
市原弘大 予選落ち
秋吉翔太 予選落ち
小林正則 予選落ち
というわけで、10名のうち4名が予選を通過しています。実は、これは例年に比べていい成績。全英では、2017年は4人中1人、2016年は8人中2人、2015年は8人中1人、2014年は8人中2人と、日本人選手は1〜2人しか通過していません。
しかも、今回と2016年を除いては、そのうち1人を日本のエース、松山英樹選手が占めています。優勝争いには絡めませんでしたが、例年に比べると決勝ラウンドに人数的にも割合的にも多くの日本勢が駒を進めていることがわかります。
この要因はどこにあるのでしょうか。その有力な候補は「経験」ということになるでしょう。
今回予選を通過したうち、小平選手は現在PGAツアーが主戦場、川村選手は今回スコットランドを訪れたのが世界38カ国目という“旅人ゴルファー”で、優作選手は今年欧州ツアーを主戦場としており、池田勇太選手は昨年夏頃まで海外を転戦し、すべてのメジャーに出場しています。つまり、全員が海外経験豊富な選手たちなんです。
小平、優作、池田の三選手は、押しも押されぬ国内のトップ選手。そういった選手たちは、一昔前であれば、国内にとどまってプレーするのが当たり前でした。しかし、最近ではどんどん海外に出る傾向があります。これは、石川遼、松山英樹両選手らが、日本のトップに立ったキャリアの前半から、主戦場を海外に移したことが少なからず影響していると思います。
SNSの発展などもあり、ゴルファーにとって世界は確実に狭くなりました。海外にいながらにして日本の情報も手に入りますし、逆また真なり。池田選手、優作選手などは外国人のキャディを起用し、英語でコミュニケーションをとりながら、彼らの経験値をうまく取り入れてプレーに活かしています。
飛距離で負けても貫き通す「自分のゴルフ」が成功の秘訣!?
かつてPGAツアーに挑んだ田中秀道プロは、その飛距離差を埋めるべく必死の努力をした結果、かえって自分のゴルフを見失うことになってしまったと語っていますが、そういった先人たちの経験談を、今の選手たちはよく知っています。そういった先人たちの経験談も活かされていると思います。
無理に飛距離を伸ばそうとせず、「自分のゴルフ」で世界に挑む。小平選手が、日本ツアーで磨いた技術で、コースとマッチさえすれば勝てることを証明したのは、そういった意味で決して小さい出来事ではないと思います。松山選手だって、ダスティン・ジョンソンに比べたら飛びません。それでも世界のトップと互角に戦えるのは、「自分のゴルフ」を磨き、それに徹しているからではないでしょうか。
日本人選手たちが、それぞれ磨いた技術に、海外を転戦することで経験を蓄えれば、とくに全英オープンのような飛ばしたもん勝ちではない試合では、十分にチャンスがある。そんな風に感じた、今回の全英オープンでした。