全英の地、風吹き荒れるカーヌスティでは“スティンガー”でお馴染みのタイガーをはじめ、多くの選手が「ノックダウンショット」を駆使していた。低弾道で風に強いこのショット、アマチュアが打つにはどうすればいい? 数多のプロのスウィングをデータ分析してきた専門家、ゴウ・タナカが解説!

短く持つ・ボールは右・トップを低く・フィニッシュ通常

全盛期を思わせるプレーで大いに全英オープンを盛り上げたタイガー・ウッズ。タイガー完全復活優勝を期待したゴルフファンも多かったのではないだろうか。私もその一人だった。残念ながらタイガーフィーバーは12番の痛恨のダブルボギーを機に終わってしまったが、十分見ごたえのある全英オープンになったのは確かだった。

その全英オープンを見てアマチュアの方は気になったことがあるのではないだろうか。それはタイガーをはじめ、ロリー・マキロイ、ジョーダン・スピース、トミー・フリートウッド、松山英樹など数多くのプレイヤーがやっていたアイアンでのフィニッシュを低く抑えたノックダウンショット、パンチショットだ。

タイガーがティーショットでやればスティンガーと呼ばれたりもする、アマチュアが憧れるかっこいいショット。現に全英オープンが終わってから、周りのアマチュアゴルファーから一番多く聞かれたのが、このフィニッシュを抑えたノックダウンショットについてだった。

画像: 風が強いカーヌスティではティショットからアイアンを持ち、“スティンガー”と呼ばれるノックダウンショットを打っていたタイガー・ウッズ(写真は2018年の全英オープン)

風が強いカーヌスティではティショットからアイアンを持ち、“スティンガー”と呼ばれるノックダウンショットを打っていたタイガー・ウッズ(写真は2018年の全英オープン)

ゴルフファンなら誰もが試したことがあるであろうこのショットだが、私なりにその打ち方を解説してみる。全英オープンのような、風が強いリンクスコースでは威力を発揮するのがこのショットなのだが、その目的は球の高さを抑え風の影響をできるだけ低くし、ターゲットにより安全に運ぶことだ。

球を低く打つということでトッププレーヤーはフィニッシュも抑え、そして低くなっている。これをこのままテクニックとヘッドスピードのないアマチュアがやると……結果は誰もが経験したことあるだろう、引っ掛けた球だ。

では、その原因を説明する。トッププレイヤーはその速いヘッドスピードに、さらにしっかりとハンドファーストでインパクトできている。ノックダウンショットの鍵はまずこのハンドファーストのインパクトにあるのだ。ハンドファーストでインパクトすることにより、球はそのプレーンよりやや右に飛び出していく。

そしてほとんどのトッププレーヤーは、ロフトを立てて出だしを抑えるために通常よりも球を右にセットアップし、普段よりも鋭角な入射角でインパクトをする。そのためターフが通常よりも深くとれるのだ。

アマチュアのプレーヤーがこのショットをやるとするならグリップをやや短く持ち、球を右にセットアップするのがまず絶対条件。タイガーは球を通常の位置のまま、インパクトをよりハンドファーストにすることでノックダウンを打ったりもするが、この技術はあまりにもレベルが高いため参考にならない。アマチュアの場合はできるだけシンプルにする必要があるので、まずセットアップに注意しよう。

そして次に大事なことは、プロがやっているようにフィニッシュを低く抑える意識はしないということ。フィニッシュを低くするというイメージは上から球を叩くイメージになりやすくほとんどのアマチュアの場合、通常よりトップが高くなりカット軌道を誘発しがちだ。

画像: タイガーのようなティショットでのスティンガーは無理でも、「8番くらいならいける」とゴウ・タナカ(写真は2018年の全英オープン)

タイガーのようなティショットでのスティンガーは無理でも、「8番くらいならいける」とゴウ・タナカ(写真は2018年の全英オープン)

解決策はトップポジションを低くコンパクトにするということ、そしてトップから真下に拳を下ろすイメージでしっかりとインサイドからインパクトするということだ。球を抑えるイメージを持つと、右肩を通常より早く始動させる傾向にあるのでそこにも注意が必要だ。そして振り抜きのイメージは左ではなくターゲットに出していくイメージが良いだろう。出球も真っすぐではなく、やや右に出していくぐらいが丁度良い。

フィニッシュをプロのように低くしなくて良いので、振り切らず8割程度に抑えるというだけのイメージでいいだろう。セットアップでロフトを立てた時点ですでに球は低くなるので、ヘッドスピードがプロと比べて劣るアマチュアが、その上フィニッシュを抑え込もうとすると引っ掛けてしまったり、球が低くなりすぎて距離が全然出ないというリスクが出てきてしまう。

同じ理由で、全英でタイガーが見せたようなティショットでのノックダウンショットはアマチュアには現実味がないので、このノックダウンショットは短いクラブ限定、8番アイアンぐらいまでがアマチュアにとって限界だろう。ヘッドスピードがドライバーで47m/s以上でるようなパワーヒッターならば、もう少し上のクラブで試してみても良いかもしれない。

バラエティーに飛んだショットはよりゴルフを面白くする。スコアを出すのだけがゴルフの醍醐味ではないので、こういった憧れのショットを自分でやってみるというのも良いのではないだろうか。

撮影/姉崎正

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