ブランドが増えて特性も細分化された感のあるカスタムシャフトだが、PGAツアー選手たちに人気なのはどのメーカー? 彼らがシャフトに求めるものとは? 月刊ゴルフダイジェストのツアー担当・ケンジロウが現地からレポート!
三菱ケミカル、フジクラが人気
こんにちはケンジロウです。オハイオ州アクロンのファイヤストーンCCからお届けしております。今週はWGCブリヂストン招待の取材に来ております。
火曜日の今日は予報通りにお昼前に振り始めた雨によって選手は練習の中断を余儀なくされました。今週初めてコースに現れた小平智は前半9ホールを周り、そのあと雨が止むのを待って夕方にコースに戻り、レンジで球を打ち直しました。USオープンチャンピオンのブルックス・ケプカも雨が上がった後の6時ごろにコースに現れて、レンジで球を打ってスウィングの調整をしていましたね。
さてさて、今日はこちらのシャフト事情を話題にしましょう。まずは使用率について。現地のシャフトメーカーのツアー担当者によれば、米PGAツアーでのシャフトの使用率は、以下のようなすみ分けになっているそうです。実際には試合によって変動しますが、
「TENSEI」や「KUROKAGE」を出す三菱ケミカルのシャフトがシェア約30%
「ROGUE」などのアルディラが約25%
そして「ATMOS」などのフジクラが同じく約25%
という構図になっています。残りのパーセンテージを「HZRDUS(ハザーダス)」を出すトゥルーテンパー、日本のグラファイトデザインなどが分け合っている形です。三菱とフジクラ、そしてグラファイトら日本のメーカーでシェアが6割近くあり、日本のシャフトが米PGAツアーを席巻しているといっても過言ではないでしょう。
トレンドは軽・硬・短
ではPGAツアーの選手にはどんな特性のシャフトが好まれるのか? その傾向を前出の担当者に聞いてみました。
「ヘッドはやさしく球がつかまるようなモデルを使う一方でシャフトは硬く、短くして、44.5インチぐらいの長さでライン出し感覚で飛ばすプロが多くなっています。280ヤード先のフェアウェイにしっかりと着弾してくれるクラブが好まれ、飛ばないのもダメですが、飛びすぎてもダメと考えるプロが多い。飛びすぎると足が出てラフやハザードに入ってしまいますからね。
やはりドライバーでも狙ったところに打てないと、今のPGAツアーの難しいセッティングではスコアが出せないんです。プロはみな硬くて短いシャフトでミート率を上げることを優先しています。ボールの芯とクラブの芯が当たれば、ねじれの少ない、いい球が打てますからね」
なるほど。たしかに最近はクラブ長が45インチを切るようなスペックの選手が増えていますよね。以前より、さらに硬いシャフトが好まれているということですかね?
「シャフトの硬さはXかTXが多く、だいたいの選手はそれをチップカット(先端部をカットして硬度を高めること)してさらに締めています。TENSEIやHZRDUSなどの“叩ける系シャフト”が好まれているのも飛びというより(左に行かない)安定性を求めてだと思います」
重さに関してはどうですか?
「若い選手の間で60グラム台のシャフトが増えている気がしますね。若い選手はあまり重いシャフトを使いたがりません。全英オープンで活躍したザンダー・シャウフェレも60グラム台のシャフトを使っていますが、デカヘッドで育った選手たちは重量が重くなるとクラブを手で持ち上げる感覚が出てしまうと聞きます。もちろん振れる範囲でいちばん重いのがいいのは間違いありませんが、昔に比べてシャフトは軽くなっているのは事実ですね」
フジクラの現地ツアー担当者パット・マッコイさんによれば、フジクラのシャフトの使用者はドライバーで68~75グラム、スプーンで70~85グラムの範囲に収まるそうです。やはり少し軽くなってきていますよね。
ちなみにダスティン・ジョンソンが使うのは「スピーダー661TS(ツアースペック)」のXシャフト。ダスティンも60グラム台のシャフトなんですね~。1インチチップカットしてより硬さを出してしっかりと叩ける仕上がりにしているとのことです。
やはりトレンドは軽・硬なのか。いまだに「シャフトは迷わず6S」というのはちょっと古い考え方かもしれませんよ~。
写真/姉﨑正