パーシモン世代はやっぱり短尺が好きなのか?
昨今のドライバーの長さは45.5インチあたりが標準的。男子のレギュラーツアーの場合はそれよりやや短く、45プラスマイナス0.5インチの幅に多くの選手が当てはまる。ところがシニアツアーでは、驚くほど人によって長さが違っていた。まずは、44.25インチの短尺ドライバーを手に、ファンケルシニアでドラコン賞を獲得した、52歳の寺西明に長さについて聞いてみよう。
「44.25インチにしているのはやっぱりミート率が上がるから。長くするとスピン量も増えるんですよ。長いクラブが振れるタイプと短いほうがあっているタイプがいると思いますね」(寺西)
同じファンケルシニアのドラコンで3位だった東聡(57歳)も長さは44.5インチと短目のセッティングだ。
「46インチまで試したみたんだけど、だんだん短くなってきたね。それはやっぱり振れるから、それとミート率。しっかり振れることでミート率が上がって結果的に飛距離に結びついているのだと思う」(東)
ちなみに東のヘッドはテーラーメイドのM2、シャフトは60グラム台のツアーAD VRを使用している。レギュラーツアー顔負けのスペックだ。
やはり、短く重いパーシモンヘッドとスチールシャフトの組み合わせでゴルフを始めたシニアたちは、短いクラブを使う傾向があるのか!? 実は、そんなことはまったくない。寺西が言うように、「短いほうが合う人・長いほうが合う人」に明確に分けられるのだ。
室田淳と高橋勝成のベテラン勢は長尺を使う
長尺ドライバー使いの代表は、今季1勝でトップテン5回の室田淳(63歳)。還暦を迎えてなお300ヤード級の飛距離を誇る衰え知らずの鉄人は、46.75インチの長尺を使う。
「もう歳だからさ、飛ばなくなったからね。いろいろ試してるよ」と多くは語ってくれないものの、1ヤードでも遠くへ飛ばしたいというプロゴルファーとしての欲求は尽きないようだ。ヘッドはテーラーメイドのグローレF。そこに、最新モデルの“ジ アッタス”シャフトを組み合わせるあたり、飛ばせるスペックへの探究心もまだまだ衰えていないようだ。
もう一人、ビジール535のヘッドに46.5インチの長尺を使う高橋勝成(68歳)はゆったり振るには長尺がマッチしているという。
「昔はビシッと振っていたんですが、最近はゆったり振るようにしています。ゆったり振ると入射角が浅くなって高さも出せるんです。打ち出しが高くなるからアイアンでも同じように振ってますよ」(高橋)
50歳を迎えたプロゴルファー中村修は、両者の違いをこう解説する。
「ビシッと振りたいタイプは短尺、ゆったり振りたい選手は長尺。回転のスピードで振るタイプの選手は短尺、遠心力を生かして振りたいタイプの選手は長尺を使っていますね。高橋勝成プロのように、かつてはビシッと派だったのを、年齢とともにゆったり派へとモデルチェンジし、それに伴って長尺へと移行するパターンもいて、シニアならではの飛ばしの工夫が見られます」
レギュラーツアーの選手は基本的にビシッと振るタイプがほとんどで、だからこそ46インチ以上のクラブを使う選手は少数派となるようだ。そうかと思えば、58歳の芹澤信雄のように、「この長さは変えられない」とレギュラー時代と変わらない60グラム台のSシャフトを45.5インチで組んで使い続ける選手もいる。要するに人それぞれなのだが、シニアの場合その振れ幅が広いのだ。
最後に、アマチュアのシニアゴルファーに、ドライバーの長さに関して、中村はこうアドバイス。
「たとえば7番アイアンの飛距離が明らかに落ちてきたと感じるようになったら、ドライバーの総重量を軽くし、長くしてゆったり振るのがいいでしょう。そうでなければ、逆に44.5インチ程度の長さを試してみるのも面白い。ビシッと振れて、ミート率もアップすることで、かえって飛距離アップする可能性がありますから」(中村)
長いほうが飛ぶとは一概に言い切れず、短いほうが飛ぶということもない。シニアプロたちを参考に、自分自身の体力やスウィングのイメージに合わせて、柔軟にスペックを選ぶことが、飛ばしにはなにより大切であるようだ。
写真/岡沢裕行