男子ツアーでは300ヤードを超える飛距離が当たり前になってきた。一体いつの間に、プロたちの飛距離はこんなに伸びてきたのか? 過去のデータから検証してみた。

世界でもっともツアー平均飛距離の数値が高いツアーをご存知だろうか。PGA(米男子)ツアーと思う方が多いかもしれないが、実は違う。答えは、PGAツアーの下部ツアーにあたるWEB.comツアーだ。

ツアー全体の平均飛距離は304.8ヤード。飛ぶ選手も飛ばない選手もいるなか、全部ひっくるめての平均飛距離が300ヤードを超えてきているのだ(ちなみにランク1位のキャメロン・チャンプの平均飛距離は342.6ヤードと完全に異次元)。ちなみに、20年前の同ツアーの平均飛距離は280ヤード弱で、ここ20年でおよそ25ヤード以上、平均飛距離が伸びていることになる。

WEB.comツアーほどではないものの、国内男子ツアーも平均飛距離は上がっている。ドライバー平均飛距離の上位10名の平均で比較すると、20年前の281.0ヤードから、299.2ヤードと、やはり20ヤード近くアップしている(あくまで上位10名のみの比較だが)。

画像: 国内男子ツアーの平均飛距離トップテンの数値の平均は、20年前と比べて20ヤード弱伸びている

国内男子ツアーの平均飛距離トップテンの数値の平均は、20年前と比べて20ヤード弱伸びている

国内ツアーで平均300ヤードを初めて超えたのが、記録の残る限り2001年ブレンダン・ジョーンズで、300.76ヤード。その後、小田龍一、小山内護、塚田好宣といった飛ばし屋たちが、次々に“平均300ヤードの壁”を超えている。

2003年から、のちにアマチュアにも適用されることになるドライバーの高反発規制が行われるが、その影響も見られず、基本的には右肩上がりで推移している。ボールの進化と、反発性能だけに頼らないドライバーの進化が両輪となり、ゴルフ界の飛距離は年々伸びていることがわかる。

ちなみに、USGA(全米ゴルフ協会)の「ディスタンス(飛距離)レポート」によれば、1996年の時点では、日本ツアーのほうが、PGAツアーよりも平均飛距離は上だった(!)。しかし、2002年頃を境に徐々に両者の差は開き始め、現在は平均でおよそ10ヤードの差が開いている。

このことについて、プロゴルファーの中井学に聞いてみると、「飛ばす必要の差」に答えは見出せるという。とにかく飛ばしたら飛ばしただけ有利な場合の多いWEB.comツアーでは、コースセッティングの違いによってプレースメントの意識がより求められるPGAツアーよりもさらに飛距離アップが加速するというわけだ。

今年、男子ツアーではミズノオープンが開催された8000ヤードを超えるモンスターコース、ザ・ロイヤルGCが注目されたが、あのようなコースでのツアー開催が増えると、さらに飛距離アップは加速するかもしれない。

画像: 2013年の松山は、飛距離ランク10位で賞金王となった(写真は2018年全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

2013年の松山は、飛距離ランク10位で賞金王となった(写真は2018年全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

さて、最後に面白いデータを発表しよう。過去、ドライバー飛距離ランクトップ10に入り、かつその年に4勝以上挙げ、賞金王となった選手は何人いるかというもの。最近から順に紹介すると、まずは2013年の松山英樹が、飛距離291ヤード(10位)で賞金王になっている。

画像: 2009年の石川遼は飛距離ランク9位で賞金王に(写真は2018年KBCオーガスタ 撮影/姉崎正)

2009年の石川遼は飛距離ランク9位で賞金王に(写真は2018年KBCオーガスタ 撮影/姉崎正)

次いで2009年の石川遼。この年石川は平均292.37ヤード(9位)を飛ばし、年間4勝を挙げ賞金王に。そこからさかのぼること8年、2001年には伊澤利光が平均292.5ヤード(4位)で年間5勝、2億円を超える賞金王を稼ぎ、賞金ランク最上位につけている。

画像: 1995年には賞金王かつ“飛距離王”となった尾崎将司(写真は2017年ホンマツアーワールド 撮影/大澤進二)

1995年には賞金王かつ“飛距離王”となった尾崎将司(写真は2017年ホンマツアーワールド 撮影/大澤進二)

圧巻なのは1995年の尾崎将司。なんと、賞金ランク1位、ドライバー平均飛距離も1位という離れ業を演じている。松山、石川、伊澤、尾崎といえば問答無用のその時代のスーパースターたち。やはり、飛んでなおかつ強い選手は花があるのだ。

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