独自に考案した「ツイスト打法」で300ヤード以上飛ばす“雑巾王子”こと武市悦宏。武市によれば、スウィングテンポが速い人ほど飛ぶのだという。自身の著書「オレって、こんなに飛んだっけ?」より、スウィングテンポと飛ばしの関係を紐解いてみよう。

都会の人って歩くの速いから、絶対に飛ぶはずなんだけどな~

“類は友を呼ぶ”ってマジで当たっていると思う。僕の周りは変わったヤツばっか。その筆頭が、大学の同級生Y内くん。先日も、平日の真っ昼間に電話があったのだが、ご無沙汰だったので、「久しぶり、元気?」という会話で始まると思いきや、ヤツにはそんな常識はない。開口一番「ちょっと、この音を聞いてくれ」と。

「はっ? なんで?」という質問はあっけなく無視され、次の瞬間“バシッ、バシッ”という音が電話の向こうから聞こえてきた。どうやら練習場で球を打っているらしい。

「もしもーし。Y内、聞こえるか?」

“バシッ、バシッ”

僕と打球音のかみ合わない会話が続いたあと、やっと人の声がした。

「ね、すっごいチーピンでしょ?」

彼は打席に携帯を置き、打球音からミスの原因を解明してくれというのだ。動画ならともかく、音だけじゃさすがにわからないよー、と絶句してたら、「わからんか。じゃあね」だって。恐ろしくせわしないヤツだ。

でも、Y内くんのような性格って意外とゴルフうまいんだよね。なぜかというと、せっかちな人はスウィングテンポも速いから。ボクの人間観察によると、打つのが速い人ほど飛ぶという結果が出ている。

【1】ティアップ→【2】方向確認→【3】アドレス→【4】打つ。

ショットはたった4行程なんだから、30秒もかからんよね。とくに、4番は2秒でOK。イチで上げて、ニで下ろす。素振りが抜けてるって? ノン、ノン。素振りなんてボクはしないよ。ライの悪いところなら別だけど、ティグラウンドは基本、平らなんだから必要なし。

以前アマチュアゴルファーとアドレスから打ち終わるまでの速度を競争したことがある。ボクがフィニッシュしたとき、その人はクラブがまだバックスウィングの腰の位置だった。トーナメント中継が始まったら、プロと比較してみるといいよ。いかに自分が遅いかがわかるから。

“打ち急ぎはダメ”って言うけど、打つテンポが速いのがダメって意味じゃないよ。ゆっくりバックスウィングして、トップから急に速く振るのがいけないってこと。全体的に速くすれば、なんの問題もなし。

画像: スウィング全体のテンポが速いと余計な動きをしなくなり、コンパクトで合理的なフォームになる

スウィング全体のテンポが速いと余計な動きをしなくなり、コンパクトで合理的なフォームになる

ボクも昔は、曲がらないようにと“でら”(編注:武市の出身地・中部地方の方言で“とても”の意)丁寧にクラブを振っていたけど逆効果だったな。遠心力がかからないから飛ばないし、手で操作しちゃうから余計に曲がるし、ろくなことがなかった。でも、意識的に速く振るようにしたら、クラブやカラダが余計な動きをしないから、コンパクトで合理的なフォームになった。

そこで提案。次のラウンドはいつもより早歩きを心がけてみよう! イチ、ニ、イチ、ニのリズムで歩き、そのまま、イチ、ニでクラブを振る。それが自分のリズムになればしめたもの。

僕からすると、都会の人は飛ばしの素質があると思うよ。だって、早歩き得意でしょ。たまに東京へ行くと、誰かに追われてるんですかっていうくらいみんな早歩きで、驚くわ。ゴルフ場でもその調子でテキパキ歩いて、スウィングしてみて。きっと、いつもよりかっ飛ばせると思うよ。

ちなみに、あとから思うとY内くんの打球音には若干ながら“ベロッ”というゴムティの音が混じってた。すなわち、クラブが下から入って、ちょっとダフリ気味ってことだから、やっぱりチーピンしていたのかも……!?

「オレって、こんなに飛んだっけ?」(ゴルフダイジェスト新書)より

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