小平の2018年は天国と地獄が入り混じったローラーコースターのようなシーズンだった。
はじまりは地獄。ソニー・オープン・イン・ハワイ大会前にクラブが破損し最下位で予選落ち。しかしそこから国内ツアーに戻りアジア開催のSNBCシンガポールオープン、レオパレス21ミャンマーオープンに出場しともに2位タイに入ると世界ランク50位以内に浮上。
念願のマスターズにも出場し28位タイとまずまずの成績を残した。このあたりからがシーズンのクライマックス=天国へと足を踏み入れることに。
無欲で挑んだマスターズ翌週のRBCヘリテージ2日目に「63」のビッグスコアをマークするとトップと6打差からスタートした最終日「66」をマークしプレーオフに進出。3ホール目でキム・シウを下しツアー初優勝を飾った。
「頭のなかが真っ白」という言葉を繰り返した小平にはジャック・ニクラスやゲーリー・プレーヤーからツイッターで祝福が寄せられ一気に知名度を上げた。
その勢いのまま一気に2勝目まで突き進むかと思われたが、そこからは苦しい展開が続いた。5月のザ・プレーヤーズ選手権から正式なツアーメンバーとして本格参戦を果たしたが6月にかけて全米オープンを含む5試合で予選落ち。
全英オープン35位、全米プロでも予選を突破(59位タイ)したが、以降3試合予選落ちで終戦を迎えた。
アマチュア時代ナショナルチームで活躍し海外遠征を数多く経験してきた小平は、昔から「いつか米ツアーで」という思いを抱いてきた。
「スウィングが美しくなければゴルフじゃない」という信念を持つレッスンプロである父の指導を仰ぎショットメーカーとして揺るぎない地位を築いてきた。
デビュー当初は「パットがダメすぎて」上位に顔を出せず、先輩プロたちから「お前のショットがあればオレなら何勝もしているよ」とからかわれたが、弱点だったパッティングを強化したことで頭角を現した。
そして20代最後の年を迎えた今年スポット参戦でつかんだ思いがけない最高峰のツアーでの優勝。憧れの舞台に立つチャンスを得たものの慣れない環境で毎試合知らないコースをプレーする日々は苦
難の連続だった。最終戦となったデルテクノロジーズ選手権では首痛にも悩まされた。
天国と地獄を歩んだ小平は「この経験を生かして来年につなげたい」とポジティブな言葉を口にした。米ツアー2年目のシーズンは10月にスタートする。小平には周囲のなにものにも惑わされず自分のゴルフを貫いて再び天国への道を歩んでもらいたい。
撮影/姉崎正