タイガーのために作られたようなフォルム
タイガーが今回選んだのはテーラーメイドの「ジュノ」。まずはそのフォルムを見てみると、タイガーのエースパターとして有名な「スコッティ・キャメロン ニューポート2」とそっくり。もちろんライ角やロフト、重量などはタイガーに合わせて細かく調整してあるはずだが、市販品を見てもその出来栄えは素晴らしいと、プロゴルファー中村修は絶賛する。
「近年のテーラーメイドのピン型のパターの中で間違いなく一番いいです。構えたときの座りの良さ、安定感とフェースとネックのスクェア感などの見え方、トップブレードの厚みなど、タイガーのパターにそっくりです。タイガーの実使用パターでストロークしたことはありませんが、おそらく振り心地も揃えているでしょう」(中村)
ジュノの前に使っていたマレットタイプの「アードモア3」に変える際、タイガーはこう言っていた。
「いつものようにアドレスしてボールを転がしてみた。するとなにか違和感を感じたんだ。フィーリングにも見え方にもズレがあった。だから(スコッティ・キャメロンは)少しベンチで休ませようと思ってね。またいつかピタッとハマる日がくるかもしれない。そういうことはよくあるから」
そうしてベンチから出てきたのがアードモア3で、そのパターで結果も出ていた。それなのにピン型に戻した真意はどこにあるのだろうか。中村は「角型のマレットであってもつかまり度合いを示す重心角(パターを水平にしたときにできるヘッドの角度)がピン型とほぼ同じアードモア3は、エースパターに感じた違和感を解消する効果があったのでしょう」と分析。
しかしそれが解消されたとして、キャメロンに戻さずにジュノに変更したのはなぜだろうか。実は、アードモア3とジュノには重心角とフェースインサートという共通点がある。重心角が同じなのでストローク中の振り心地は非常に似ており、ボールの転がりに影響を与えるインサートも同じなので距離感やフィーリングも似ている。違う点は構えたときの見た目だけであることに、今回の変更を読み解くヒントがあると中村は言う。
「全英オープンで見たタイガーのパッティングは、優勝争いに絡んだとはいえ、まだ全盛期の鋭さを取り戻していないように感じていました。具体的には、振り幅の狭いストロークでビシッとオーバー目に打っていたのが全盛期のパットだとすれば、距離を合わせるように打っているように見えたんです。距離を合わせると、芝の影響が強くなり転がりが均一ではないグリーンでは入る確率が落ちます。しかし、全米プロでのタイガーのパットは全盛期を思わせるしっかりしたストロークで、球の転がりも強かった。そのフィーリングが戻ってきたからこそ、見え方がシャープなピン型に戻したんだと思います。その際、見た目とフィーリングはキャメロンと良く似ていて、アードモア3とインサートの同じジュノを選んだというところではないでしょうか」(中村)
マレット型もいいけれど、タイガーにはやっぱりピン型パターでビシッと打ってミラクルパットを決める姿を見せて欲しいと願うのは世界のタイガーファン共通の願い。果たして、新たな相棒ジュノを手に、復活優勝はなるか……!?