スライスに悩むアマチュアゴルファーは多い。しかし、2005年にレッスン・オブ・ザ・イヤーを受賞したプロゴルファー・増田哲仁は「フック系のボールのほうが本来打ちやすい」と話す。自身の著書「ネジらない!遠くへ飛ぶ、ピンに寄る。」からドロー系の球筋が打てる練習法をご紹介。
サンドウェッジでボールを曲げる練習を練習してみよう
――アマチュアが上達するために、まずはどこから手をつければいいんでしょうか。
まずは左に曲がるフック系、ドロー系の球筋を打てるようになってほしいですね。そのほうが簡単だし、上達も早いからです。
――上達のスピードはともかく、フックよりもスライスを打つほうがずっと簡単だと思いますが。
体の正面にあるボールを飛球方向に飛ばすには、体を左(反時計回り)回転させなければいけません。体を左に回して打てば、頭の上から見たクラブヘッドの軌道はインサイドから入ってきて、インサイドに抜けるんですから、ボールに左回転のかかったフック系のボールが出て当然。そのほうが自然なんですよ。
人間というのは普段の生活でも体を左に回すフックを打つような動きのほうが圧倒的に多いんです。陸上競技のトラック、野球のダイヤモンドもすべて左回りです。これは心臓のある左側を軸に回したほうが自然にスムーズに回れるからなんですよ。
ゴルフのスウィングもその自然な動きに合わせてあげればいいだけなので、フック系のボールのほうが本来は打ちやすいはずです。初めてクラブを持ったような人がスライスボールを打つのは、本当はとても不自然なことのはずなんです。
それなのに、ほとんどのアマチュアがスライスで悩むのは、ボールを真っすぐ打とうとしているのが原因と考えていいでしょう。自然に打ったら左に曲がってしまうので、真っすぐ打つためにそれと逆の動きを無意識のうちに無理やりしている、と考えられます。
――スライサーが自然なドローボールを打つにはどうしたらいいんでしょうか。
なによりもイメージが大切です。よくスライスを直すには、クローズスタンスに構えろとか、ボールを右足寄りに置けなどというレッスンがあります。しかし、スタンスやボール位置など小手先の「型」だけを変えてもなかなかうまくいきませんし、本質的な解決にはなりません。
どうやったらボールに左(反時計)回転をかけることができるかをイメージするんです。なんとなく、でかまいません。それだけで体が勝手に反応してくれるので、必ず左回転のボールが打てるはずです。とくに、サンドウェッジで練習すれば、ボールがつかまりやすいので、フックを打つことは簡単でしょう。
――イメージだけで、そんなうまくいくでしょうか。
ドローのイメージがどうしても持てないという人は、ボールを打つ、とか叩くというのではなく、ボールを「押す」イメージを持つといいと思います。ドローやフックを打つときは、インパクトからフォローにかけて、ボールを上から見て4分割したときにの右半分の手前側(体に近い側)4分の1を押してやるようなイメージを持つと、ボールにうまく左回転がかかるんです。
練習場に行ったら、とにかくボールに左回転をかけるイメージを強くもって、徹底的にボールを左に曲げる練習をしてください。それでもボールを左に曲げられないという人は、練習場のいちばん左端の打席から打つようにするといいでしょう。
左端の打席は自分のすぐ左側にネットがあるので、そこに当てたくないという意識が働き、自分にインサイドから右に打ち出す動きになりやすいんです。もちろんコースに行っても、18ホールすべてドローを打つイメージで回ってみてください。
真っすぐできれいなショットだけを求めるのは、自動車の免許をとるために教習所のなかをただグルグル回っているようなもの。それではいざ路上に出たときにすぐ事後を起こしてしまいます。まずはフックボールを自分の持ち球にする。それからフェード系、さらには高低まで打ち分けられれば、どんなプレッシャーのかかる状況でも、動揺しなくなると思いますよ。
「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/岩村一男