距離計測器にはGPS式とレーザー式がある
距離計測器は、大きくレーザー式とGPS式に分類できる。このうち一般に廉価なのはGPS式のほうで、1万円以下で購入できるものもある。後述するレーザー式のようにいちいち計測作業を行う必要がないため手軽で、ポケットにいれておけるものから腕時計型、音声タイプなど様々なものがある。
セルフプレー時にゴルフカートにナビが搭載されているケースも増えてきたが、あれもGPS式だ。手軽さが魅力だが、最近では、ガーミンの「アプローチG80」のように、レーダー機能を搭載してヘッドスピードとそこから飛距離の概算値を割り出すといった、付加価値のついたものも増えている。

ガーミン「アプローチG80」はコースでの距離計測だけなく、ヘッドスピードなどのショット計測も可能(写真提供/ガーミンジャパン)
GPS計測器というと、以前は計測の制度が不安視されるケースもあったが、たとえばユピテルの「YGN7000」などは、使用する衛星の数を増やすことで精度を高めるなど、日に日に進化を遂げている。

ユピテル「YGN7000」は、使用する衛星を増やすことで精度をより高めている(撮影/岩村一男)
ただ一方、プロキャディなどの専門家が使うのはほぼ100%レーザー式だ。プロキャディに限っていえば定番はブッシュネルの「ピンシーカー」シリーズ。なんといっても狙ったところをピンポイントで計測できるところに強みがあり、“バンカーのエッジまで162ヤード”といったような細かい計測ができる点がプロから評価されている。

「ブッシュネル」はプロキャディの使用率が高い。写真は「ピンシーカー プロXEジョルト」
ブッシュネルと並ぶのがニコン。従来、遠くのターゲットの距離を測る際に問題となった手ぶれを軽減する機能を搭載した「クールショットプロ スタビライズド」などが人気だ。

ニコン「クールショット スタビライズド」は手ブレ防止機能搭載でスムーズに計測できる(撮影/増田保雄)
また、レーザー式はGPS式に比べて高いという声が従来多かったが、最近ではだいぶ安価なモデルも発売されるようになってきた。
また、距離計測器に関して、ルールで認められているのは2点間の距離を計測するものだけだが、周囲から見て2点間計測のみを使っていることがわかる計測器も登場している。計測器が“定番化”するのに伴い、選択肢は増え、使いやすさは上がり、価格もこなれてきているのが現状だ。
距離計測器、プロ・上級者はどう使ってる?
続いては、プロや競技ゴルファーの基本的な距離計測器の使い方を知っておこう。上級者が(練習ラウンドなどを通じて)距離計測器で把握する代表的な距離は以下のようなものだ。
・ティーイングエリアからハザードまでの距離
・ティーイングエリアからハザードを超えるのに必要な距離
・セカンド地点からグリーンエッジまでの距離
・セカンド地点からグリーンセンターまでの距離
・セカンド地点からグリーンの奥エッジまでの距離
これらを知ることで、ティショットならハザード手前かハザード越えを狙うかのジャッジをし、セカンド地点ではピン位置に応じた最適な番手を選ぶことができる。
距離計測器で把握すべきは「自分のキャリー距離」
プロゴルファー・中村修は、アベレージゴルファーが距離計測器を使うことには「3つのメリット」があるという。
「我々プロは、自分の番手ごとの飛距離をキャリーで把握しています。しかし、アマチュアの方の場合、『7番で150ヤード飛びます』と言った数字が実はランも含めた距離だったりすることが多いんです。距離計測器を使うことで、自分の番手ごとのキャリーがわかる。これが第一のメリットです」
グリーンエッジまで150ヤードと距離計測器で分かった上で番手を選び、もしショートしたらその番手のキャリーは150ヤードに満たないことがわかるし、グリーン上に着弾すれば、エッジとボールマークの位置からその番手のキャリーがわかるというわけだ。
「キャリーが把握できるようになると、自分の得意距離もわかってきて、マネジメントに幅も出てきます。たとえば、残り50ヤードより、むしろ残り80ヤードのほうがピンに寄せられる確率が高いとか、そういった自分の傾向が見えてくるんです」
バンカーを超えるかどうか、池を超えるかどうかなど、ゴルフでは正確なキャリーの距離を把握しておきたい場面は多くある。そして、正確なキャリーを把握しておけば、風の影響も勘案して精緻なマネジメントを行うことも可能だ。
もちろんミスショットしたら元も子もないが、たとえミスをしたとしても、そのような積み重ねは必ずゴルフをひとつ上のレベルに引き揚げてくれる。そのためにも、距離計測器はあったほうがいいわけだ。
距離計測器を使うと「ハザードにつかまる」可能性が減る
そして中村は、次なるメリットとして「ティショットでハザードにつかまる可能性が減る」ことを挙げる。

「見た目」で判断していたハザードまでの距離を数字で把握することで、クラブ選択によるミスを減らすことが期待できる
「たとえば、あまりない状況ですがティーイングエリアから250ヤード地点のフェアウェイをクリークが横切っているとします。その状況で、ドライバーのキャリーが240ヤードという人はドライバーを持ちませんよね。『クリークまで250ヤード』という事実がわかっていれば、ナイスショットしたのにハザードにつかまるといったことがなくなり、スコアが守れます」
距離計測器がプレーファストにつながる!?
さらに、最後のメリットとして意外にも「プレーファスト効果が期待できる」と中村は言う。打つ前にいちいち距離を測るのは、むしろスロープレーにつながる危険性を感じないでもないが……。
「コースに仕掛けられた錯覚に惑わされずにハザードやピンまでの距離を把握することで、“番手選びのミス”が減り、それによって時短効果が期待できるんです。自分の番になって初めて距離計を取り出すのではなく、同伴者のプレーの間にさりげなく距離を測っておく。そんな風にスマートに使うのがいいですね」(中村)
距離計測器導入でベスト更新。「正確な距離を知ることで自信を持って打てた」
最後に、実際に距離計測器を使い始めてベストスコアを更新したというアマチュアゴルファーのSさんに話を聞いてみた。
「ナイスショットのはずが届かないといったように、自分で思った距離を打ったつもりがショートすることが多かったんです。知り合いに借りて計測器を使ってみてはじめて、自分の正確な距離がわかったんです。そのこと自体も良かったんですが、番手選びに不安がなくなったことで、安心してショットすることができるようになったのがメリットでした。とくに130ヤード以内からグリーンに乗る確率が増えたと思います」(Sさん)
100ヤード以内のショットを打つ場合、セルフプレーでカートにもGPSが搭載されていない場合、ゴルフ場の杭などの距離表示で残り距離を計算するしかない。しかし、多くの場合100ヤードの地点を最後に杭はなく、目測でのショットを余儀なくされる。100〜150ヤードの幅でも50ヤード刻みのざっくりの距離しかわからない。
それが、今から打つのが63ヤードだな、87ヤードだなと正確にわかることで自信をもってショットに臨むことができ、その結果、ナイスショットの確率が高まったのだという。
「手軽にGPS式を使ってみて、腕前が上がりもっとも細かい距離が知りたいと思えばレーザー式へと移行するとか、より多機能で高精度なGPS式へアップグレードを図るのが手軽でいいのでは」とSさん。実際、最近では「とりあえず距離がわかればいいや」という需要を満たす腕時計型がジワリと人気だという。

イーグルビジョン「watch ACE」。腕時計型はその持ち運びやすさがメリットだ
自分が欲しい情報は、正確な二点間の距離なのか、ざっくりの残り距離なのか、コースレイアウトも見たいか、競技でなければ高低差などの情報も欲しいか否か……自分のゴルフに「なにが必要か」を考えて、必要な情報を提供してくれる計測器を選ぼう。