2016年、体の一部を支点とするアンカリングが規制されたことで、軒並み成績を落とした長尺パター使用プロたち。彼らが、2018年に復活の時を迎えている。その復活の理由を、長尺パター使用プロたちに分析してもらった。

きっかけは5月に開催された“第五のメジャー”ことプレーヤーズ選手権で、ウェブ・シンプソンが勝利したことだろう。

画像: アンカリング規制を乗り越えプレーヤーズ選手権で勝利したウェブ・シンプソン(写真は2018年の全英オープン 撮影/姉崎正)

アンカリング規制を乗り越えプレーヤーズ選手権で勝利したウェブ・シンプソン(写真は2018年の全英オープン 撮影/姉崎正)

シンプソンはアンカリングが規制されたことで2015年、2016年にはパットのスコアへの貢献度がツアー174位と大不振に陥る。苦しみ抜いたシンプソンが、中尺パターとクロウグリップ(右手を添えるようなスタイル)に出会って復活「人生でいまが一番パットの調子がいい」と語った。

それに勇気を得たのが「BMW選手権」で勝利したキーガン・ブラッドリーだ。長尺パターを使用して初めてメジャーを勝った(これがアンカリング規制の引き金となったのは間違いがない)男は、その苦しみをこう語っている。

「長尺パターを使っていたときは、ただパッティングするだけだった。(規制後は)自分のパッティングストロークを見つめ直す必要が出てきたんだ」

画像: BMW選手権で6年ぶりの復活優勝を果たしたキーガン・ブラッドリー(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

BMW選手権で6年ぶりの復活優勝を果たしたキーガン・ブラッドリー(写真は2018年の全米プロゴルフ選手権 撮影/姉崎正)

二人に共通するのは、「短尺パター」で復活したわけではないという点だ。ブラッドリーは、シンプソン同様に中尺パターを選択、グリップを左腕に固定するマット・クーチャースタイルで復活した。全米プロで優勝争いに加わったアダム・スコットも、長尺パターを固定しないスタイルで活路を見出している。

自身も長尺パターを使用していたパターに詳しいプロゴルファー・早川佳智は言う。

「アンカリングをする、しないに関わらず、長尺パターは性能的に短尺とは大きく異なるんです。まず、高い位置からラインを見ることができるから、ラインの全体像を把握しやすい。また、長く、重いことで小さな動きでも良く転がります。アンカリングしなくても、優位性はあるんです」(早川)

多くのプロが、規制後は短尺パターへの移行にトライし、結局は中・長尺パターをアンカリングせずに使う方向に戻ったのには、他にも理由があると早川は分析する。

「僕の場合、単純にパターが下手だったので長尺を使っていたんですが(笑)、手が動かないイップスのプレーヤーにとって、長尺は『手を動かさなくていい』というメリットもあるんです。体を動かせば勝手にクラブが動いてくれますから」(早川)

今年フジサンケイクラシックのマンデートーナメントを通過し本戦に出場したプロゴルファー・深沢尚人も長尺から規制後に短尺に変え、再び長尺に“戻ってきた”プロの一人。

「現在は長尺パターをアンカリングしないように、以前のものより少し短くして46インチくらいで使用しています。結局のところ長尺パターを使うメリットは、短いパターのストロークとはまったく似ていないストロークになることで、短いパターを使うことで起きた現象、悪い動きが起きないことだと思います」(深沢)

深沢によれば、アプローチイップスは技術的な問題を解決することで克服できたものの、パットに関しては「どんな方法を試しても改善できなかった」のだという。世の中には、長尺パターでなければ解決できない問題が存在することが、このことからもわかる。

さて、最後に、長尺パターで優勝したプロといえばこの人を忘れてはいけない。日本ゴルフツアー選手権森ビルカップでプロ18年目の初優勝を果たした市原弘大だ。

「途中2年間ほど短尺でシードを獲ったこともありましたが、元からあまり体にくっつけるタイプではなかったので、規制後も46インチの長尺パターを使い続けています。(長尺を)長く使っているせいか打った瞬間に入ったと思うようなパットが結構あるんです。それが短いパターだといい感じで打てたのに思ったのとは違うとかあったので、確信が持てなかったんです」(市原)

画像: 今年の日本ゴルフツアー選手権森ビルカップで初優勝を果たした市原弘大も、長尺パターの使い手(写真は2018年のWGCブリヂストン招待 撮影/姉崎正)

今年の日本ゴルフツアー選手権森ビルカップで初優勝を果たした市原弘大も、長尺パターの使い手(写真は2018年のWGCブリヂストン招待 撮影/姉崎正)

打った瞬間に入ったと思うパットがカップインするか、しないか。言うまでもなく、これはプロにとっては大問題だろう。

「やっぱり長尺で結果が出た人は、長いほうがフィーリングがいいんじゃないでしょうか。長尺でも短尺でも本人が一番フィーリングが出るのが一番。微妙なタッチや試合の中でのフィーリングが出ることが大事なんだと思います」

アンカリングする、しないを問わず、長いほうがフィーリングが出る人、短いほうがフィーリングが出る人(たとえばタイガー・ウッズ)がいる。2018年の長尺パター愛用者の復活の連鎖の背景には、そんな“当たり前の事実”があったのだ。

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