2018年メジャー大会覇者は、全員クラブ契約“フリー”選手だった
最終戦でタイガー・ウッズが5年ぶりにツアー優勝。ライダー・カップも盛り上がり必至の今週だが、いきなり、4月の話、今年のマスターズの優勝者は誰!? と聞かれたら、一瞬、誰だっけ? と困惑してしまうのではないだろうか。
答えは、パトリック・リード。クラブ契約フリーの選手がメジャーに勝った! と少しだけ話題になったのを思い出していただきたい。その後、6月の全米オープンでブルックス・ケプカが勝ち、全英オープンではフランチェスコ・モリナリ、そしてメジャー最終戦の全米プロでまたもブルックス・ケプカと、2018年は結局全戦でクラブ契約 “フリー”の選手が勝利した珍しいシーズンとなった。
こうした事象を目の当たりにすると、クラブ契約なんてしないほうが活躍できるのでは? と思いたくもなるが、今年のメジャーチャンプはキャップのロゴを見ればわかるとおり、全員ナイキ契約の選手である。2016年に同社がボール、クラブ事業からの撤退を決めたのをきっかけに、クラブ契約については 問答無用で“フリー”の身となってしまったわけだ。
その後、2年経ち、いまだにフリーということは、存外、自由になってみたら居心地がよかった、ということなのかもしれない。なによりメジャー優勝という結果が出ているのだから、彼らにとっては、怪我の功名であったといわざるを得ない。
日本ツアーでも自ら契約“フリー”を選んだ、池田勇太が活躍
日本ツアーでも、宮里優作らが自ら契約“フリー”となって注目をされている。その先鞭をつけたのは池田勇太だろう。ちょうど先週、ダイヤモンドカップを制し、ツアー20勝に到達。聞けば、その優勝の背景には、新しいドライバーの存在があったという。
池田は先週、プロギア製RS F(2018モデル)プロトタイプ(10.5度/ディアマナ BF/TX/45.25インチ/バランスC8)ドライバーを使用。2016年にはRS Fプロト(2016)で3勝をマークしており、契約こそしていないがドライバーはずっとプロギアがお気に入りなのだろうと思っていたのだが、実際はそうでもなく、紆余曲折があるらしい。そのあたりをプロギアのツアーサービスに詳しく聞いた。
「池田プロの場合は、クラブをテストして結果がよくないとなった場合、それを再調整してじっくり合わせていく、という話にはあまりなりません。ダメだったら、メーカーを問わず新しいクラブをどんどん試していく、それがスタイルなのです。もちろん、お蔵入りになったと思っていたクラブがいきなり試合で使われることもあります。今回の新RS Fのプロトタイプも、実は5月の時点でテストをお願いしていて、その時は“飛距離が出るのは魅力。でも少しスピンが少なく、左にまっすぐ抜けてしまう(思うようにフェードしない)”と使用されずに終わっていたのです。それが突如、夏のKBCオーガスタで使われ、フジサンケイ、ダイヤモンドカップでも継続使用。そして記念すべきツアー20勝目に貢献することができたのです」(プロギア/ツアーサービス)
伏線は、全米プロの時に使用したドライバーが思うようにつかまらず、苦労したことにあったという。これが5月のテスト段階で “左に行く”とされた、新RS Fプロトを再び手に取らせることになったのだ。
こうした背景を考えると、池田はテストしたクラブの特徴を完全に把握しており、自らの調子や弾道に合わせ、自由にクラブをあてがうことで安定したゴルフを続けていることがわかる。道具の特徴を見抜く目と、その特徴を覚えておく記憶力、そしてその時々のゴルフに効く道具を選び出せる才能。それがあるからこそ、“フリー”でいられるし、その方がいいと思えるのではないだろうか。
自由にクラブを選べる、という立場においては、我々アマチュアも同じだが、必ずしもその自由はよい結果には結びついていない。また、トッププロだからクラブの性格を見抜く目を持っている、ともいえないだろう。もとよりメジャーで勝ったり、ツアーで20勝したりする非凡な才能があるからこそ、道具的な自由を謳歌できるのではないか。考えれば考えるほどそんな気がしてならない。
今シーズンの結果を踏まえ、2019年はさらにクラブ契約フリーがトレンドになるとの見方もあるが、果たしてそれは賢い選択といえるのだろうか。