目の前には高いアゴ! 横を見ればベンツ!
女子ツアーも残すところあと7戦。そのうち2戦は「TOTOジャパンクラシック」「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」と出場選手が限られるため、実質あと5戦と言っても過言ではない。富士通レディースと言えば、18番のガードバンカーが有名なコース。選手たちの身長ほどに切り立ったアゴを擁したこのバンカーが“事件現場”になることもしばしばだ。
バンカーからの脱出に複数打を要するのは、アマチュアならばお手の物(?)だが、プロでもバンカーの“規模”が大きければ、まるでアマチュアゴルファーのようにバンカーから出られないという悪夢に見舞われることを、この大会を見て痛感したゴルファーも少なくないのではないだろうか。優勝争いでこのバンカーにつかまって悔し涙を浮かべたプロも少なくない。
練習ラウンドではほとんどの選手がこのバンカーにつかまったというシチュエーションでの練習を行っていた。アゴ近くに3つボールを落とし、どの距離からならピンを狙えるか、ピンを狙わずに一度横に出して打つかを実験。1歩半以上あれば出せそうな選手が多かったが、本番も上手くいくとも限らない。一度横に出してそこから狙おうと考える選手もいたのだが……。
「(優勝賞品の)ベンツがある……こわい!」
と横に出す場合に飛球線方向のベンツが気になることを嘆いた選手のひとりが比嘉真美子。「ピンを狙うにもアゴの高いバンカー、横に出すにもベンツ。ホームランして当てちゃったら……こわい!」と最終ホールの“2つのプレッシャー”に戦々恐々だ。この日練習ラウンドを一緒に回った三浦桃香と金澤志奈はともにメルセデスベンツのスポンサー契約選手。万が一でも当ててしまったら、と考えるとそのプレッシャーは他の選手以上かもしれない。
この後、小祝さくらも同じようにバンカー練習を行った。「1歩半よりボールがアゴに近かったら出すしかないかな」と“ベンツに向かって”の練習も欠かさなかったが、やはり「こわーい」とひとこと。ベンツ、なんという存在感なのか。
ちなみに公式ホームページでこの優勝賞品「CLA 180 AMG Style」を調べたら、1台404万円から。404万円分のプレッシャーだ。
最終日の勝つか負けるかの土壇場では、一筋違えばバンカーにつかまることも覚悟の上で、バーディを獲るためにピンを狙わなくてはいけない場面も多くある。チャンスとピンチが紙一重なのがトーナメントゴルフの醍醐味。今年の富士通レディースも、名物バンカーがどんなドラマを巻き起こすのだろうか。楽しみにしたい。
撮影/矢田部裕 取材大会/富士通レディース