少ない時間でアイアンの距離感を磨く
――よく「シングルになるにはカネ・ヒマ・体力」などといいます。練習できる財力と時間が前提としていないと、本当にゴルフはうまくなれないんでしょうか。
練習量が少ないからといって、上達を諦める必要はまったくありません。たくさん球を打てばいいというわけではないし、週1回の練習でもやり方次第でレベルアップはできます。シングルにだってなれます。その実、私はほとんど練習しません。練習がとことん嫌いなんです(笑)。
――最低でも150球、200球以上は打ちたいですね。
ほとんどのゴルファーは普段の練習不足を補いたいので、一回の練習で多くの球数を打とうとします。なかにはマシンガンのように、1、2時間で300~400球も打つ人もいるようです。しかし、たくさんボールを打ったからといって上達するとは限りません。「練習球数=上達」ではないのです。ドライバーからウェッジまでとっかえひっかえ打って、何球かに1回ナイスショットが出て満足するのは、厳しいことをいえば運動やストレス発散にはなっても、ゴルフの練習にはなりません。
――「球数≠上達」なのはどうしてですか。なぜ好きなだけ打つことは上達に繋がらないのでしょう。
好きなだけ打てると思えば、なにも考えずに、ただただクラブを振ってしまう「無駄打ち」が多くなりやすいからです。もし週に1回しか練習できていないのなら、1球たりとも無駄にしてはいけません。そのために敢えて100球なら100球と球数を制限して、それ以上、打たないと決めるのもひとつの方法です。
――ポンポンと無造作にボールを打つのは、効果がないんですか。でも週イチで100球なら、カネとヒマの問題も解決できますね。
100球しか打てないと思えば、1球1球に気持ちが集中しますし、コースほどではないにしろ、多少緊張もするでしょう。コースに出れば、打ち直しは効かないんですから、このほうがより実戦的というわけです。
それによく、「最初はウェッジでボールを打ってウォーミングアップする」という人がいますが、ウォーミングアップなら素振りで十分。1球目からコースにいるような緊張状態でボールに向かうんです。その際、ただ漠然とショットをしてはいけません。ホールを想定し、きちんと狙うべきターゲットを決め、そこに向かってしっかりとアドレスをとる。最初の1球目から最後の100球目まで、すべとのショットを必ず仕切り直して、つねにターゲットを狙って構え、ショットをしていくことが大切です。
――1球1球「狙う」意識を持つことで、ラウンドしているような実戦感を出すわけですね。
100球しか打てないのですから、13本すべてのクラブをじっくりまんべんなく打つのは無理ですし、またその必要も一切、ありません。ですから練習場にはウェッジ1本にショートアイアン、それにミドルかロングアイアン、合計で3~4本も持っていけば十分です。
――ドライバーは持参しないんですか。
1球も打つなとはいいませんが、月4回の練習のうち1回だけ持っていくとか、毎回打っても、1回数球程度に抑えたほうがいいでしょうね。ドライバーというのはクラブのなかで最も軽いんです。軽いクラブというのは、つい手先で操作しがちなため、沢山打つとスウィングを壊す原因にもなりかねません。
それにドライバーを持つとどうしても飛ばしたくなります。ついつい目一杯振ってしまう。100球しかないのに、ドライバーを何十球もブンブン振り回していたら、スウィングが暴走し始め、アイアンやウェッジもドライバーのように目一杯振るようなクセがついてしまう。これはブレーキの壊れた車で暴走しているようなもので、いつも大事故になってもおかしくない。
ドライバーをブンブン振り回す練習はスコアアップのための練習にはならないんです。
――ドライバーのマン振りが、すべてのショットに影響してしまうんですね。
ここは重要なポイントですが、最も練習量の多いクラブのリズムや力加減が、その人のスウィングの基本になるんです。だから、さっき練習場に持っていくのは3~4本でいいといいましたが、本当はサンドウェッジ1本だけでもいいくらいです。重量のあるサンドウェッジなら自然と体全体で振るようになりますから。それに、飛ばそうという気持ちにならないので、スウィングリズムもよくなります。
「ネジらない!から遠くへ飛ぶ、ピンに寄る。」(ゴルフダイジェスト書籍より)