パッティングの不調もたしかだが……ショット力はむしろ向上
2014年と2018年のデータを比較してみると、2018年の平均飛距離は304.6ヤードで1.1ヤードほど伸びている。フェアウェイキープ率も2018年は62.46パーセントで全盛期より1%弱良くなっている。つまりより飛んで曲がらないを実現しているという結果だ。
パーオン率も2018年は71.2%と全盛期よりも2.41%も良くなっている。つまりパッと見ではショットの精度は全盛期よりも良くなっていると言えるだろう。
では、パッティング、アプローチを比較してみよう。2018年度は165位で、全盛期の54位から大幅に落としており、かねてから言われているパッティングの影響があるのは間違いないようだ。
そしてスクランブリング(アプローチ)も2014年は60.73%で37位だったが、2018年は55.84%で152位とこれも大幅に落としている。
パッティング、アプローチの影響は思ったよりもランキングへの相関は少ないと、これまでのデータ分析で明らかになっているとはいえ、ショートゲームが米ツアーでほぼ最低水準にあるという事実が、アダム・スコットの不調に影響しているのは否定できないだろう。
ただ、ショットの水準はむしろあがっていることを加味するとショートゲームの不調だけで、ここまで結果がでないというのは経験上考えにくい。
そこでバーディ率を見てみると、パー4、パー5でのパフォーマンスが大きく落ちていることが分かった。全体バーディー率は2位から63位に、パー4では4位から126位、パー5では1位から89位と大幅に落としてしまっている。
では、なぜショット全体の数値が上がっているのに、ここまでバーディの数が落ちてしまっているのか?
全盛期である2014年に目立ってよかったショットが3つある。それはラフからの200-225ヤード、フェアウェイからの200-225ヤード、そしてフェアウェイからの100-125ヤードのショットだ。
そしてとくに大きく2018年の数値が全盛期に比べ落ちているのが100-125ヤードのショット精度だ。この短い距離で平均して5フィート(1.67ヤード)もよらなくなっている。この短い距離での平均的ぶれはかなり大きい。
アダム・スコットは全盛期では飛距離をいかしてパー5で取るバーディのほかに、3打目で寄せてバーディ、パー4での100-125ヤード残しからのバーディもかなり量産していた計算になる。それでパー4(4位)、パー5(1位)というバーディ数の記録を残したのだ。
PGAツアーは、2018-2019年シーズンの開幕戦がすでに行われた。そこで飛んで曲がらないを見事に実行したスコット・ピアシー(フェアウェイキープ全体1位の82.14%、平均飛距離302ヤード)は予選落ちしたが、ルーク・リストは平均339.5ヤードと全体1位の飛ばしを武器に、48.21%という低いフェアウェイキープ率ながら、とにかく飛ばすスタイルで4位に食い込んだ。
ピアシーのパー5のスコアが2日間でトータル1アンダーだったのに対し、リストは4日間で12アンダーだった。やはり、飛んで曲がらなくてもパー5でスコアを伸ばせないとランキングで上位に食い込むのが難しいというのが浮き彫りになるデータだ。
日本オープンもアダム・スコットの100-125ヤード付近のショット、パー5でいかにバーディをとっていくかに注目してみれば、よりおもしろくなるのではないだろうか。