パーシモン、メタル、カーボン。玉石混交だった30年前のドライバー
鬼が笑うどころの話ではないが、10月も半ばにさしかかると雑誌の新春号に関わる打ち合わせもチラホラと始まってくる。その中で、そうか平成は終わるのか、と認識を新たにした今週だった。
平成は、1989年1月8日から始まった。30年前、ゴルフクラブの世界はどうだっただろう? とふと思い、当時のChoice誌を開いてみた。特集は、’89 GOLF大図鑑である。
テーラーメイドのツアープリファード・メタルが表紙。88年のDRIVER OF THE YEARへの投票を告知する号のため、その前年の大賞ドライバーであるツアープリファード・メタルが表紙を飾ったのだ。
中面を読むと、テーラーメイドの二連覇も十分あり得るが、マグレガーのターニー、クリーブランド・クラシックスなどのパーシモンドライバーにも、大きな票が動く可能性が大いにある、と解説されていた。
誌面広告をみても、まだまだパーシモンドライバーが主役、ステンレスメタルドライバーはどちらかといえば、米ツアーで人気の話題のニューウェポン的な扱いだ。88年の全米プロで150選手中、64人がテーラーメイドのメタルウッドをバッグに入れ、大きな話題に。使用率42・6%という数字が大きな衝撃を与えたのだ。
ただし、メタルドライバーはパーシモンよりも投影面積(構えた時のヘッドの大きさ)が小さく、スチールシャフトが装着されていたこともあって、アマチュアには難しい印象があった。
このため、当時、アマ向けには、クレイン、ヤマハ、ヨネックスなどの日本メーカーがカーボンヘッドドライバーを発売しており、こちらのほうが軽く、打ちやすいと評判になっていた。プロ、アマで使うクラブがはっきりと違う、わずか30年前はそんな時代だった。
ドライバーヘッドの大型化に突き進む、きっかけが生まれた、平成の始まり
平成元年(89年)の誌面をみると、パーシモン(木材)、メタル(金属)、カーボン(炭素繊維)など、各メーカーが異なるマテリアルを用いて使いやすさをアピールする、玉石混交の非常に面白い時代だったことがわかる。
ただ、ひとついえるのは、まだこの時ドライバーヘッドは非常に小さいものだったということ。誌面にも広告にも、今では当たり前の“慣性モーメント”という言葉が、一切使われていない。ヘッドの大型化については、まだ夜明け前の雰囲気だ。
89年といえば、米国でキャロウェイが「S2H2」メタルを発売した年である。まだ、大型メタルヘッドのパイオニア、「ビッグバーサメタル」には、数年を待たなければならないが、この「S2H2」というショートネックヘッドこそが、大型化のきっかけを作った。そういう意味で平成元年は、今どきドライバー元年ともいえるのかなぁと少し思った。
平成の30年間、このわずかな時間の中で、ゴルフ道具、とくにドライバーは急激にその大きさを変えた。お遊びで89年製のメタルと2018年製のチタンを並べてみる。金属をよくもここまで膨らませたものだと感心した。重さを測ると、193グラムと192グラムだった。大きいほうが1グラム、軽かった。平成のあと、ドライバーはどう変わるのだろう? ふとそんなことも思った。