飛びの3要素のひとつ「スピン量」の正体
こんにちは。ギアオタク店長の小倉です。今日はみんな大好き飛距離に関するお話です。ゴルフで飛びにとても大事な要素は3つあります。「ボール初速」「打出し角」そして「スピン量」です。今日は「スピン量」についてお話したいと思います。
近年発売されるドライバーのほぼすべてと言ってよいぐらい、“低スピン”はセールスポイントのひとつになっています。低スピンだから弾道が強い、低スピンだから風に負けない、だから飛ぶ! といった感じ。しかし、本当に低スピンは飛距離に繋がるのでしょうか。
そもそも低スピンという表記。私も安易に使ってしまいますが、スピン量は低い、少なければ良いというわけではありません。ボール初速と打出し角に合わせて「適切な」スピン量を実現して初めて効率が良い、いわゆる飛ぶ弾道が生まれます。アベレージゴルファーにスピン量が多いゴルファーが多いために低スピンといった表記が一般的になってしまい、スピンが少ないほど良いという誤解を招きそうな表現で定着してしまいました。
しかし、それも10年ほど前の話です。最近クラブフィッターとして診断させて頂いたお客様や、練習場に来られるアベレージゴルファーを観察していると、昔ほどスピンが多くて飛距離を大きくロスしているなという方は減っていると感じています。もちろん低スピンのクラブを使っている方が増えたために減ったところはあるでしょう。しかしそういったクラブを使っていなくても極端にスピンでロスしているような方は稀になりました。
これには要因が2つあると分析しています。ひとつは、460ccの大きなヘッドでゴルフを始めた方、また大きなヘッドに慣れた方が多くなったから。
スピンが多くなりやすい原因のひとつとして、アウトサイドイン軌道があります。外から斬るようにボールを捉えるので、上から押さえつけるダウンブローのインパクトになりやすく、バックスピンが多くなりがちです。
このアウトサイドインの軌道は、ヘッドターンを積極的に行うゴルファーに比較的多いのですが、デカヘッドが主流になった昨今のスウィング理論は、このヘッドターンをあまり推奨していません。たとえアウトサイドイン軌道でもフェースのターンする量が小さければ、リストの動きが小さくなるため、ダウンブローの度合いもなだらかになります。ゆえに、スピンが増えすぎないんです。
もうひとつの要因は、ボールの進化です。意外と目立たないのですがボールは、どんどん進化していて、衝突エネルギーが大きい(ヘッドスピードが高い)インパクトほどスピンを減らし、衝突エネルギーが小さくなるほどスピン量が増えていくようになってきています。
スピン系、ディスタンス系などのボールのジャンルによって多少特性は違いますが、基本的にこの傾向に進化しています。つまり飛距離が必要なドライバーなどではサイドスピンも含めたスピン量を減らして、直進性を高めて曲がりを抑え、グリーンで止めなければならない短い番手になるほどスピン量を確保する様に作られています。
前置きが長くなってしまいました。要はスピン量を減らせば飛距離が伸びるゴルファーは昔より確実に減っていると言いたいのです。むしろスピンが足りず、かえって飛距離をロスしているゴルファーが増えていると思います。
クラブやスウィングを変えていなくてもボールは消耗品のため、自然とスピンが減りやすい系統のモデルを知らないうちに使っている方が多いですし、スピンがかかりづらいクラブになっているのにも関わらず、昔と同じ感覚で性能やロフト角を選んでしまうと思ったよりも打出し角が稼げず、スピンが不足しがちで滞空時間が稼げなくなります。
難しいことではあるのですが、クラブを買う前にコースで試打するのがベスト。しかしなかなかできることではありません。大切なのは現状なにが原因で飛距離をロスしているかをしっかりと把握すること。最低でも購入前に試打をして今使っているクラブと比較はしておきたいですね。
計測器で現状のクラブと比較すれば、何が変わったかを数値で見ることができます。スピン量の適正値は、ゴルファーそれぞれで違います。たとえヘッドスピードが同じでもスウィング軌道が変わればスピン量の適正値も変わります。
あくまで目安ですが、具体的な数値を挙げると
●「ボール初速」が65m/s(ヘッドスピードで45m/sでほぼ芯で打った場合の予想値)以上出せる方であれば、打出し角は12~15度。スピン量は2700rpm前後だと効率が良いです。
●「ボール初速」が56m/s(ヘッドスピードが40m/sでほぼ芯で打った場合の予想値)程度であれば、打出し角は15~18度。スピン量は3000rpm前後だと効率が良いです。
スピン量だけが飛距離ロスの原因ではありませんが、大きな要因のひとつであることは事実です。自分のスピン量がどのくらいで、クラブを替えるとどう変わったか? などを把握することでより自分に合った飛ばせるクラブに出合う確率を上げていきましょう。
撮影/有原裕晶