富士通レディースの前週、成田美寿々は韓国で開催された女子の国別対抗戦「ULインターナショナルクラウン」に出場していた。
韓国の優勝で幕を閉じたその試合で成田は3戦して3敗。そこでレキシー・トンプソンなど世界のトッププレーヤーと対戦した成田は、飛距離の差とアイアンで思ったところに止められる技術の差を目の当たりにし、ショックを受けて帰国していたという。
その翌週、今度は一転して優勝。一体その間になにがあったのか。コーチの井上透に話を聞いた。
「韓国の試合に出場した後、高いレベルのゴルフを目の当たりにし、自分に足りないところを向上させると心に決めたんでしょう、『私は上を目指したい』と世界で戦うための新たな課題を持って帰ってきました。飛距離に関しては今回キャディを務めた安福一貴トレーナーにお願いしましたが、私はアイアンで止められるように、リリースポイントをわずかに調整することでソフトに落ちる弾道を目指しました。コテンパンに叩きのめされたことをバネにして向上するところが成田美寿々の成田美寿々たる所以(ゆえん)だと改めて感じました」(井上)
また成田は穴井詩とコーチの井上透とともに、先週の月曜日にパットのラインを視覚化できる「パットビュー」を体験。このパットビューは香妻琴乃も取り入れ結果を出したもの。担当したパフォーマンスコーチの佐々木信也は言う。
「曲がるラインのときは、カップへの意識は消して、曲がりの頂点に向けて直線的に狙わなければなりません。ところが、成田さんはカップへの意識が残っていました。成田さんは本来ターゲットを直線的に狙う“ストレートエイマー”と呼ばれるタイプ。カップへの意識を消し、打ち出すべきポイントに意識を持って行く必要性を再確認したことでイメージが良くなったと話していました。結果につながって嬉しいです」(佐々木)
成田の目標は、2年後の東京オリンピック。その舞台を目指すということは、世界と戦うということ。敗北がその目標を明確にし、すぐに自分の課題を解決して勝利という結果に結びつけた成田。ゴルフでボギーより悪いスコアを打った次のホールでバーディ以上の良いスコアを出すことを“バウンスバック”と言うが、さしずめ今回は、週をまたいでのバウンスバックと言ったところか。
これで成田の獲得賞金は約9600万円。トップのアン・ソンジュとは3000万円以上の差があるが、まだ試合数は残されている。賞金女王争いが益々面白くなってきたのは間違いないだろう。