進化している韓国選手たち
10月に米女子ツアーの国別対抗戦、インターナショナルクラウン。優勝したのは世界ランク上位をそろえた韓国チームでした。
メンバーはパク・ソンヒョン(1)、ユ・ソヨン(3)、キム・インキョン(10)、チョン・インジ(12)の4名。 ※カッコ内は10月16時点の世界ランク
意外にも(?)今回は初優勝となった韓国チーム。日米ツアーで「韓国勢が上位にいる」という構図は変わらないもののシン・ジエは主戦場を日本ツアーに移し、天才と呼ばれたキム・ヒョージュは伸び悩み、その顔触れの入れ替わりは激しく層の厚さを伺わせます。
韓国勢が日米のツアーを席巻し始めたころ、韓国選手は「曲がらない」スウィングをしていました。今までの韓国人選手は、韓国女子初のメジャータイトルを獲得したパク・セリを指導していたデビッド・レッドベターの影響で「体と腕のシンクロ」がとれた再現性の高いスウィングしていました。
ですが最近、米女子ツアーに参戦している韓国選手に変化が見られます。男子ツアーの影響もあってか飛距離が重視されるコースセッティングが増え、より飛ばしにウェイトを置いたスウィングになってきているのです。
女子もついに270ヤード時代に
米女子ツアーの平均飛距離上位7人は、270ヤードを超えています。この数字は平均ですから飛距離を出しにいったホールでは280ヤード近く出ていると言えます。男子に比べてフィジカル面で劣る女子選手がなぜここまで飛ばせるようになっているのでしょうか。もっとも大きな要因は科学的トレーニングの浸透だと思っています。筋力トレーニングはもちろん、スウィングの解析でも「力(フォース)」という見えないものを可視化できるようになったことで、限られた身体能力でよりパフォーマンスを最大化させられるような動きを求める傾向が顕著になっています。
飛距離ランキング2位につけるレクシー・トンプソンを見てみると、背骨を中心とした垂直軸で回転を速めるのではなく、首の付け根を軸に肩の上下動を速くする前後軸のスウィングで飛ばしていることがわかります。この動かし方は男子ツアーでもトレンドになっており、PGAツアーで昨季の年間王者であるジャスティン・トーマスもこの打ち方を採用しています。
韓国の選手もパク・ソンヒョン(平均271.5ヤード・2018年米LPGAツアー5位)やキム・セヨン(平均263.4ヤード・同24位)らが、こうした下半身を積極的に使う前後軸の動きを取り入れる傾向にあり、より飛距離が必要とされるコースセッティングになったとしても強さを発揮し続ける可能性があります。
一方の日本ツアーでは、興業的な側面もありコースを長くして難易度を上げるという傾向はありません。ドライバーに関しては飛距離よりも正確性が求められ、よりアイアンの精度を上げることがスコアにつながるようになっていると言えるでしょう。そのためかトンプソンのような前後軸の動きを取り入れている日本人選手は畑岡奈紗や原英莉花ら一部の選手に限られています。
国内の距離が短いセッティングでは安定した成績を出せるかもしれませんが、シビアなセッティングになる海外メジャーなどでは厳しい戦いを強いられることになります。現在、LPGAツアー1位を誇る葭葉ルミは258ヤードで平均飛距離が260ヤードを超えるLPGA選手はいません。
LPGAツアートップのヤニ・ツェン(276ヤード)と葭葉の差は18ヤードあり、米LPGAツアーでは41位相当となります。日米の気候等の変動要素もあるとはいえ、男子におけるPGA(米男子)ツアー1位のローリー・マキロイ(319ヤード)とJGTO・1位の額賀辰徳(310ヤード)の差を考えると、男子に比べ女子の日米女子ツアーの飛距離の差は広がっているという現状があります。
東京オリンピックが迫る中、世界ランクを上げるためには海外の大会に出場する選手も増えるでしょう。その時に国際的にトレンドとなっている飛距離の追及が、結果を残せるかどうかの分かれ道となるかもしれません。