韓国・済州島で行われた「CJカップ@ナインブリッヂズ」で2018-2019年シーズンの自身初戦を優勝で飾ったブルックス・ケプカ。昨年度は正月明けに手首のケガをし、約4カ月もの間戦線離脱していたにも関わらず、全米オープン、全米プロとメジャー2勝を挙げ、世界ランク1位にも上り詰めた絶好調男。プレーヤー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれたが、今回の優勝で11戦3勝、うちメジャーは2勝と、まるで黄金時代のタイガーのような成績だ。
CJカップ最終日は、2位と4打差の単独首位からスタートしたケプカだが、前半はスコアを伸ばすことができなかった。スコアを伸ばせずもたついている間にフロント9で30をマークしたゲーリー・ウッドランドと首位タイに並ぶ瞬間もあり、1打を争うデッドヒートを展開。
しかし、バック9を「29」という驚異的なスコアで回り、最終ホールは圧巻のイーグルまで見せつけてウッドランドを突き放した。こうしてダスティン・ジョンソンを抜き、再び世界ランク1位に返り咲いた。
「信じられないよ。今週はパッティングがよかったんだ。決して簡単なコースじゃないし、風が吹くと難しいしね。今後も今まで自分がやってきたことをただひたすらやるだけ。スウィングを変えたり、何か違うことをするわけではない。まずは健康に(ケガなく)プレーできること、そして自分のやっていることを我慢強くこれからもコツコツやっていくことが大事。ちょっと改善しなければいけないこともあるけど、大きく何かを変えることはしないよ」(ケプカ)
現在のケプカに死角はないように思えるが、本人曰く「今年はいつになくパッティングが悪かった。ドライバーショットもいいし、ボールストライキングもいいけど、パッティングが今ひとつ」だという。
昨年度のストロークゲインドパッティング(編注:パットのスコアに対する貢献度)では、113位とたしかにメジャーで2勝を挙げた選手にしては、今ひとつである。また、ケプカの場合、飛ぶが曲がる、という典型的な例であり、昨年度のフェアウェイキープ率は158位(56.34%)だった。この辺りの数値を改善できれば、他の誰もが手をつけられないほど強くなり、昔のタイガーのようにメジャーで連覇、などもさらっと達成してしまいそうである。
ちょっと前までは、KOEPKAをなんと読むのかわからず、アメリカ人ですら「キャプカ」などと呼んでいた人もいた。私は彼がヨーロピアンツアーで初優勝を遂げた2014年のターキッシュエアラインズオープンの取材で彼の初優勝をこの目で見たが、まさかその4年後には世界ランク1位になり、全米オープンで2連覇のみならず、同年で全米プロとメジャー2勝を挙げるようなビッグな選手になるとは思いもしなかったものである。
彼は昔も今もマイペース。決して派手ではないし、どんなに勝ってもタイガーのようなカリスマ性があるわけではないが、日頃から体をジムで鍛え抜き、常にコツコツと自分のやるべきことをやり続けている実直で強い男だ。世界ランク1位をかけて抜きつ抜かれつの熾烈な争いをしているダスティン・ジョンソンとは「ジム仲間」。きっと彼が野球の選手になっても、あの体格なら活躍できるのではないか、と思う。
プロ転向後にヨーロッパを転戦していた経験が今に生きていて、どんな状況にも動じずに対処できる精神力と技術力を持ち合わせている。まだ28歳だが、ベテランの風格を持つ不思議な選手。そんな彼が、再び来月宮崎に返ってくる。今年優勝すれば22年前に3連覇達成したジャンボ尾崎と並ぶことになる。
世界1位になり、メジャー3勝を挙げている彼は、来年の元旦にマウイ・カパルアの砂浜で「今年の目標」を書くという。いったいその目標とはなんだろうか……?