今シーズン5勝目、ツアー通算28勝目で通算獲得賞金は史上最速で10億円を突破したアン・ソンジュ選手。その強さ、その安定感は、日本女子ツアーにおける歴代最強の外国人選手の一人と言っていいと思います。
2010年の本格参戦以来、賞金ランクトップ10を外れたことがなく、トップ5を外れたことも2度しかありません。次々と若い力が台頭してくる女子ツアーにあって、この安定感はちょっと異常なレベル。ジョン・ミジョン選手、シン・ジエ選手、イ・ボミ選手といった強い韓国勢と比較しても、その安定感は頭ひとつ抜けていると言っていいのではないでしょうか。
さて、そんなアン・ソンジュ選手はなぜこんなにも安定した成績を残すことができるのか。技術的な面を除いて、理由はふたつあると思います。
ひとつは、「変わらないこと」。もう日本ツアーでもすっかりおなじみとなったアン・ソンジュ選手ですが、参戦当時の2010年頃と比べてその印象はほとんど変化がありません。スウィングも大きく変わらないし、プレースタイルも大きく変わらない。もちろん本人の中で細かい変化は無数にあるのでしょうが、「ガラッと変わった」という印象を受けません。
たとえばタイガー・ウッズは、新しいコーチをどんどん起用し、体の変化に合わせてスウィングを改造することでトップの座をキープする選手ですが、アン・ソンジュ選手はその逆という印象です。常にプレーが変わらない。だからパフォーマンスも変わらない。クラブ契約をフリーにしているのも、クラブに自分を合わせずに、自分にクラブを合わせるためなのではないでしょうか。
もうひとつの理由は、「居場所を作る力」です。
ツアーの練習日に取材に行くと、よく日本人選手とアン選手がパッティンググリーンや練習場で談笑している姿を見かけますし、SNSなどにも食事のシーンなどを投稿しています。異国のツアーへの馴染み方のレベルが一段階上、という感じがします。
もちろん、これは自然に馴染んだだけではなく、必死に努力して馴染んだ部分も非常に大きいと思います。
日本ツアーにデビューした年には突然髪の毛を赤く染め、「赤毛のアン・ソンジュ」などと呼ばれましたが、それも日本のファンに早く自分を知ってもらいたいという気持ちの表れだったと言います。日本語を覚えるのも、非常に早かったといいますが、これなど間違いなく努力なしには語れないでしょう。
コミュニケーションや言語もゴルフと同様に重要なんだと認識し、ここで戦うんだと決めた日本ツアーに、確固たる自分の居場所を作る。順応力が半端じゃなく高いんだと思います。
ツアーで愛され、ファンに愛されたからこそ達成できた。永久シードまであと2勝の28勝とは、そのような数字ではないでしょうか。