ヘッドの高速クルクル体操で力が抜けてブッ飛びだよッ!
岐阜県はよく雪が降る。真冬になると僕のコースもクローズ続きで、商売上がったり。なんとか、ありあまるエネルギーを消費しないと鼻血が出そうだったとある冬の日、始めちゃいました。通信教育のペン習字!
きっかけは、行きつけの焼肉屋に飾ってある自分のサイン。それが“でら”カッコ悪いもんで、なんとかせにゃいかんと思ったわけよ。武市悦宏って自分ではキレイに書いたつもりが、「悦虫(えつむし)さんですか?」と言われたこともある。どんな虫じゃ! まぁ、そのくらい字がキタナイの。
テキストはまず、姿勢とペンの持ち方から入る。
「背筋を伸ばして腰かけ、机とカラダの間はこぶし1個。前かがみになりすぎたり、カラダが左右に傾かないように注意しましょう。ペンは力を入れすぎず、手の中にピンポン球が入るくらい開けましょう。紙はカラダのやや右に置き、ペン先と紙の角度は60度です(後略)」とな。
ゴルフで言うところのアドレス部分やな。なるほど、なるほど。
で、いざ文字を書く、と思いきや、ただの縦線を連続して書くことから始める。それが終わったら、横線。続いて波線……。
これが自分でもビックリするくらいできない!
力を抜いてペンを握れと言われても、その抜き方がわからない。肩、指先、手首、すべてガチガチで、ペン先が走らないどころか、潰れるくらいの筆圧になってしまうのだ。よって、線はへにゃへにゃ。
そうか! もしかして、アマチュアのみなさんは、こんな感じでゴルフをやっているのかと気づいた。「肩の力を抜いて」と言うかと思えば、一方で「アドレスでは背筋を伸ばして」と言われる。さらに「地面とクラブの角度はこのくらい」と注文をつけられたら、そればっかり気になって、余計に力が入る。その結果、腕や手首に力が入って、ヘッドが走らないんだ。
ためしに、胸の高さでクラブを持って、手首を支点にヘッドを左回しでクルクルと回してみて。これが、スムーズに回せない人は、僕のペン習字と一緒。すべてに力が入りすぎている証拠。
ちなみに、僕はめっちゃ速く回せるよ。トンボがいたら秒殺さ。
ヘッドを走らせることができないと、どんなクラブを使っても変わらないよ。シャフトの硬さがLだろうとRだろうとXだろうと関係なし。先っちょがしならないなら、ただの棒切れ振っているのと同じだからね。
左回しにする意味は、ハンドルで言う左折の動きを意識してほしいから。右回しだと、フェースが開いてつかまらないよ。
慣れてきたら、そのイメージで球を打ってみて。きっと“でら”ヘッドが走るから。
ペン習字も姿勢やペン角度といった細かいことはとりあえず置いておいて、まず指先や手首を自由に動かすように練習してみたんだ。そしたら、すっごくスムーズに線が書けるようになった。今はペンを持つのが楽しくて、芸能人気取りでサインの練習なんかしちゃってる。だから、僕を見かけたら遠慮しないで声かけて。練習の成果……見せたい!
「オレって、こんなに飛んだっけ?」(ゴルフダイジェスト新書)より
撮影/姉崎正